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掃除は終わったけれど、何もないので夜は宿に戻ることになった。
ローくんはどうやら午後は街の本屋に居座っていたらしい。調達部隊の荷物の中に数冊本が乗っていたのはローくんの戦利品だったようだ。ペンギンくんからそう聞いて、ベポと一緒にローくんのいると本屋に向かうことにした。問題の崖は遠回りをすれば登っていける道があって、ベポに頼み込んでそっちにしてもらった。もう、あんな崖は昇るのでもヤダ。


しばらく暗闇を歩き、街の明るさが見えてほっとした。そういえば、この街は結構繁盛している様だ。毎夜結構な馬鹿騒ぎだ。どうしてだろうか、とベポに聞くとこの島はグランドラインの初めの航路だからだそうだ。岬から何本も別れるうちの一本でこの島を上陸しないと次の島の航路を見出せないから、らしい。聞いていてもやっぱり難しいな、と街中を歩く。


ざわめく街中では、口々に今日海賊の一団が上陸したらしいと飛び交っていた。金の羽振りが良く、夕方から馬鹿騒ぎを起こしている様だ。


「なんか、“海賊”歓迎されてるみたい」


わざわざ表の港に海賊船を泊めたら良くも悪くも騒ぎになるだろう。堂々、ではあるが船は結構損傷を負っている様だ。敵にあったのかと聞くと第一の航路は一番不安定で危険だったらしい。騒がれている海賊のメンバーはこの街で豪遊しているようだ。歩いているとその噂を良く聞く。まぁ、街を襲う目的でなくてよかった。



「ふふふ、キャプテンは騒がれるの嫌いだから」
「そうだね、海軍に嗅ぎつかれても面倒臭いもんね」



面白くないこと、楽しくないこと、面倒くさいもの等はしない主義だからなぁ。良いのか悪いのか、気性は穏やかではないが極度の面倒くさがりでもあるので、ローくんは基本目立つ行動は避けている。これには共感できる。無駄な戦いは避けれるなら避ければいいんだ。一度手が付けられなくなると、面倒臭がりだけど売られた喧嘩は買うし、血の気だって結構多い気がする。面倒臭がりで良かった。


「あ、ここだね」


結構古びた本屋だが本の量はたくさんあって、ローくんには宝の山だろう。細い通路に所狭しと本棚があるため、ベポは外で待つように伝えた。
狭い通りを潜り抜けてローくんを探す。何処に行ったんだ、と奥まで来てキョロキョロしていると、店員さんに声を掛けられた。
「あの、手に刺青のある人相悪い男の人きてませんか」
わたしが言った言葉に一瞬吃驚した男の店員さんは、この通路の奥にいると案内してくれた。


お礼を言って更に奥に行くと、設置された椅子の周りには本が積み重なっていた。此処、図書館じゃないんだけどそんなに寛いでいていいのだろうか。まぁ、怖くて注意できなかったんだろうな。しかも傍らには長剣が置いてあったら誰しも近寄りたくないだろう。



「ローくん、もう帰ろう?」
「、五月蝿い」



薄暗い中で本の文字を追っているローくんは顔を上げずに、不機嫌な声をだす。暗に邪魔すんな、というところだろう。たぶん、もうこの本屋閉店の時間過ぎているけど、こんな感じのローくんに負けたんだな。ぶっちゃけ人相悪いし刺青だし刀持ってるし、声を掛けられなかったのかもしれない。溜息をついて、ローくんの本を取り上げた。
瞬間凄い迫力で睨まれて内心恐々だ。けれどもここで引くわけには行かない。


「駄目だよ、ローくん。お店の人も困っているからそろそろ買うものは買って、いらないものは返そうよ」


本から顔を上げたローくんは、やっと周りが暗くなっているのに気が付いたようだ。設置された時計に目をやって、立ちあっがローくんに積み上がった本はどうするか聞いたら読んだからもういいそうだ。3冊程買って、本を片付けようとするとそのままでいいと店員に制された。「ありがとうございました」とすごい感謝されたわたし。どんだけ迷惑かけたんだ、ローくん。
すたすたさっさと店を出てしまうローくんを追いかける。扉を開けてベポと合流した。長剣をベポに渡してローくんは宿に向かっていく。


「キャプテン、お昼食べ忘れたみたい」


だから早くご飯食べに行きたいみたい。続いた言葉に寝食を忘れるぐらいの“本の虫”は健在だと苦笑した。宿の一階は食堂を経営しているから、そこで食べるのだろう。ベポも腹ペコらしく急かされてわたしもついていく。


宿に着くとさっさとローくんは奥の席に歩いて行ってしまった。潜まった空間にわたしとベポもついていく。店員さんに適当に持ってこいと命令したローくんに、わたしは慌ててサラダとかも一応お願いしますとオーダーをフォローした。一息ついて、わたしはベポの隣に座る。目の前にはローくんだ。じっと見てきたので美和は首を傾げた。


「…匂いが違う」
「へ?あ、ああ、船でお風呂借りました!」


なんて犬並みの嗅覚。わたしはそんなにするかな、と腕をクンクン嗅いでみたが良く分からなかった。特に興味なさそうで、すぐにテーブルに届いたサラダや飲み物、おつまみ類、焼き物などが届いて一気に食事ムードに突入した。ベポはすでに両手にフォークとナイフが握られていて、涎が垂れそうである。ローくんはすでに手を付けていたが美和は苦笑して、いただきますと言ってみんなで食べ始めた。


「ありったけの酒を出せよー!」
「金はあるからさっさと席に通せ!」


と柄の悪い声がしたと同時に、そこへガラの悪そうな一団がこの店に入ってきたのが分かる。ガヤガヤと騒がしかった店内は奇妙な静けさと、一団の笑い声が妙に響いた。
金はあると噂で豪遊している海賊の一味の様だ。
わたしは振り向いていた顔をバッと勢いよくテーブルに戻すと、ローくんは気にもしない様子で届いたサラダやつまみを食べていた。目線すら興味なさそうで向けてすらいない。え、あれ一応同業者なのにローくん気にもしてないけど。ベポも美味しそうに食べている。


わたしは平然としているローくんとベポに溜め息を吐いた。
動じなさすぎだろ、周りは手を止めて視線外したりしてるのに。わたしは、海賊の一味が近くの席に案内されて泣きたくなった。視線は絶対合わせないようにしよう。心に決めて、一人だけ止まっていても不自然なのでローくんやベポのようにご飯を食べ始めた。




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