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「――…ほう、この女が“生贄”だと」
「はい、ご覧ください」


意識のない脱力した身体を掴んで起こし、胸倉を広げる。
美和は賞金稼ぎのアジトに連れてこられ、頭に事情を説明されていた。


「…素晴らしい」
「へへへ、どういう訳かこの女は神と契約している。この島に上陸した海賊の一味の様ですが“生贄”のための力ない女の様です」
「だろうな…よくやった」


褒美だ、と投げられた金貨の束が床に散らばる。
その様を見て男は嬉々として床に這い蹲ると、当然投げ出された美和は床に転がる。
金貨を掻き集める男を余所に、頭は高らかに笑い出した。



「―――さぁ、黄金を手に入れるぞ!!!」




立ち上がり、部屋に居た数人と外に出ようとする。
金貨を拾った男は気を失った美和の髪を掴み、頬を叩いた。
「起きろ!」
ぐいっと引かれ、美和は呻く。

「…うッ…」

翳む視界。瞬きを繰り返し、次第にハッキリとする意識の中口の中が微かに血の味がした。
美和は両腕を突いて周りを見渡そうとしたが、動かないことに気付く。まるで、一緒くたに纏められているような。
身じろぐ様に身体を捻るも、髪を掴まれて居る為巧くはいかない。

「おい、立て」
(…この声、あの時の)


――いやあぁ、美和さん!!
――馬鹿者が!隈男に何されても知らんぞ!!


瞬時にフラッシュバックした内容に、美和は身体を強張らせる。
此処は、敵の手の中だ。
自由は利かない。
ハッキリとした意識の中、両腕は後ろ手に縛られているのが感覚で分かる。
着ていたシャツは無残にも前が肌蹴ているが手を動かすことも出来ない。
意識のない間に“印”を確認されたようだ。

(…ちょ、わたしこのまま!?)

酷い。酷過ぎる。
下着は着けているとはいえ、印はモロ見えだし胸も膨らみが足りないけど腹部に掛けて開いている。恥ずかし過ぎる。
っていうか殴られたお腹も痣になり始めてる。
(こんなこと考えてる場合じゃないけど、一応女として泣きたくなる)


「おまえは生贄として“鍵”となってもらおう」
「…痛ッ」

ぐいっと乱暴に立たされる。
よろけると腕を掴まれ先に歩いて行った数人の後を追う様に連行された。
(あー…、これは不利な状況だな)

以前砂の国で山賊に捕まった時、女となめられ縛られることすらしなかったが今回は縛られた上、狙いが自分となると動き辛い。
けれど、パルフィンが無事のようで良かった。フィンはちゃんとこのことを伝えに行ってくれただろう。
自分の所為で大幅に予定を崩したと思うが、後悔はしていない。
(いや、ちょっと…怖いけど)
後で皆に死ぬほど謝らなくては。今回、皆に本気で怒られた美和は身に沁みて仲間の雷を知っている。
けど、自分もいっぱいいっぱいの中で考えた最善の道が是だと思ったのだ。
甘い考えで皆を危険に晒すのは身が引けるけど、わたしは皆を信じる。
ごめん、こんな時に頼らせてもらうしか出来なくて、歯痒いけど、皆を待ってる!




――勝手に決めやがって、この馬鹿!相談くらいしやがれ!
(シャチくん、相談する時間がなかったよ)


――しょうがないとは言え、女の子なんだから無茶するな美和
――美和が痛い思いする分、貰えるもん全部奪っていくことにした!
――チビの癖に一丁前に選択しやがって
――文句一杯だけどしょうがねぇから冒険思いっきりしような!
――殴れるなら神を殴ってやりてぇよな!
――心配掛けやがって、美和が決断したは良いけど相談しろよな!
(頼もしく優しい仲間で、本当に皆と一緒に居たい。ごめん、また勝手しちゃった)


――怒っているよ。けど、美和が考えて最善の結果だと出した答えなんだろう
(ペンギンくん、考えたけどわたしの最善なんて一時凌ぎしか出来ないよ…)




―― 馬鹿が、次やったら晒し首にしてやる。――覚えておけ 
―― クルーに感謝するんだな ――

(…ローくん、怒ってるかな)



暗い道を引きずられ、考えれたのはそんな皆の事だった。





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あきゅろす。
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