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まさか、こんなことになるとは。

美和は、激しく後悔した。こんなことになるなら、ベポについて来て貰った方が良かったのだろうか。ううん、けれどどちらにせよ同じだったかもしれない。
人生なんてこんなもんだ。予測できないことばかり起きる。
ほら、だって目の前には極悪な顔達。此奴等が、賞金稼ぎの手下どもってことだろう。
突如、数人の男共に囲まれ、武器を差し向けられたのだ。
パルフィンさんを庇うように後ろ手で隠す。脳内で警鐘が鳴っている。

「…よぉ、巫女サン突然消えるから、探したぜぇ?」
「頭がご立腹さ、早く戻らねぇとヤられちゃうぜ」

下種な笑い声を上げる連中に、パルフィンの身体が強張るのが解る。此奴等、女子供にも見境がない輩の様だ。
どうしよう、護身術は習っていても男に勝てるかどうか解らない。ふたりで逃げても捕まってしまうだろう。

「あー、其処の女はなんだ?現地の者でもなさそうだが…」
「嗚呼、そういやお頭達に喧嘩吹っかけてる海賊が居るって聞きやした!たぶん、そいつ等の仲間では、」
「ほう、女をクルーにする弱小チームという事か」
「大したこと無さそうだな!」

はははは、と笑い声を上げる奴らに苛立つ心を深呼吸して吐き出す。
挑発に乗ってはいけない。油断を誘わなくては、助かる道はない。
けれども、相手も同じことで、囲んでいる輩が総てではなかった様だ。背後よりもう一人近付いてきており、不覚にも振り向いた時には、振り上げられた木のバッドのようなものしか見えなかった。
咄嗟にパルフィンを引き倒し、腕を上げるけれども諸に腕から背に掛けて殴られてしまった。

「ッ!!」
「いやあぁ、美和さん!!」

吹っ飛ばされて地面に蹲るわたしに駆け寄るパルフィン。
(…いったぁあああ!っていうか、女の子相手に背後からって卑怯!!)
体力付けていたって、痛いモノは痛い。たぶん、修行していなかったら一発で気絶するぐらいの痛さだ。まぁ今も意識は朦朧としているのだが。
地面に手を着いて、気丈に立ち上がる。拙い、荷が重すぎる。
男は総勢10人。こっちは女2人。
瞬間、ぞわりと背筋が凍る。殴られて放ってしまったフィンが奴らの手に渡ってしまっていた。眼が、“合う”感覚に、咄嗟に叫ぶ。


「――…ッフィン!駄目!!」
『ッ何故!?此奴等など消してくれる!!!』


乗っ取られる感覚に、咄嗟に拒絶するとフィンが怒った。たぶん、フィンの力を使ったらその後フィンは“動けなく”なる筈。意味がなくなってしまう。
出来るなら、この事をローくんたちに伝えて欲しい。此奴等に囚われていたパルフィンさんを奴らの手に渡してしまったら、何をされるか分からない。まだ、こちらが捕まった方が生きられる“術”がある。
切り札の、“生贄の証”があれば殺されはしない。

だから、パルフィンに乗移って!

パルフィンは巫女だ。たぶん、意識を移すことが出来るだろう。処女が基準だとしたら巫女の身体であれば出来る筈。
意識で訴えると、戸惑っているようなフィンの意識も流れ込んでくる。


「お願い!フィン!!!」
『馬鹿者が!隈男に何されても知らんぞ!!』
「ッいいから、行って!!」


フィンの眼が、パルフィンを映す。そして、風が舞い上がると同時にパルフィンは髑髏を奴らから奪う。パルフィンの眼は閉じられていて、カクリとした動きだがフィンが操っているのだと分かる。
呆気に取られた連中は、咄嗟に武器を構えるが操られたパルフィンは素早く駆けだす。
その際に、フィンが心配そうな視線をくれたけれどこれがわたしに出来る精一杯だ。

「…あーあ、逃げられちゃったよ」
「おまえ、どうしてくれんの」
「ってか、コイツ何独り言言っちゃってんのー、危ない奴?」

はは、と嗤う男共に囲まれ、胸倉を掴まれて立ち上げられる。
相手は片腕にも拘らず胸倉だけを持ち上げる様にして視線を合わせられた。爪先もつかず苦しくて相手の腕を掴む。キッと睨みつけると、片眉を上げたこの10人の中でリーダー格の男はせせら笑った。

「こういう時は怯えるもんだぜ、嬢ちゃん」

一瞥くれ、そのまま視線を下にずらされる。
そして、もう片方の空いた腕でぐいっと胸元を引っ張られた。そして、胸元の“印”を見て口元が歪んだ。
しまった。此奴等、“生贄”が此処に印があるのだと知っているようだ。

「…こりゃいい拾い者をした」

周りを囲んだ男どもは、どうせ遊ぶならあの巫女の方が美人だし胸がデカいからあっち狙えばいいのに、と失礼な事抜かしていて。
意味が解っていない手下共にリーダー格の男は意地悪く笑う。

「…あっちは巫女という名の役立たずだ。こっちは血統書付だぜ?手出しは禁止だ!直ちにお頭の元に戻る!!」

苦しくて、必死に腕に爪を掛けると腹を殴られた。
衝撃と共に呼吸も一瞬止まり、周りが暗くなる。嗚呼、せっかくシャチくんに鍛えて貰ったのに何も出来なかった。



(…ロー、くん)





嗚呼、また怒られちゃうな。





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あきゅろす。
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