anemone
勇気を出して!
「…通行人A」
「…グリーン、先輩…。」
「行くぞ。」
ー9話ー
今、先輩の家に向かっている。けど、僕と先輩はなにも話さなかった。僕は話題を探したけど、なにから話したらいいのか、分からなかった。
「…」
「…あの、グリーン先輩…」
「なんだ?」
「…えっと…」
僕はなにを伝えたいんだろう?ここで先輩に話しかけて、なにを?
「どうした?」
「…あの、」
頭がごちゃごちゃしてきた。脳みそフル回転してる気がする。
「言いにくいことか?」
「いえ…そうじゃなくて…。…なんて言えばいいのか、わかんなくて…」
「…ずっと俺を避けてた割りに、そんなこと言うんだな」
ぐさり。
…なんか、グリーン先輩にそうゆうこと言われると傷ついた。僕がそう言われても仕方のないことをしてたのに。
「…俺のことが嫌になったのか」
「ちがっ…!!違います!!それだけは違う!!!!僕は…!!」
「なにか理由があるんだな?」
「…」
あんまり、あの日のことを話したくない。僕にとっては嫌な思い出なのだから。
「…とりあえず、家に入って話すぞ。」
「…はい。」
気がついたら、先輩の家に到着していて、なんだか、さらに気まずくなってしまった。
「とりあえず、座れ。」
「…」
「通行人A?」
「…先輩は、…グリーン先輩は、僕のこと嫌いになりましたか?」
なぜか、出た言葉。言うつもりはなかったけど、勝手に口が開いていた。
「僕のこと、嫌いなら、僕はここに…座れません…」
泣きたくないのに、涙が出てくる。水分がもったいないし、グリーン先輩を困らせるから、泣いちゃ駄目なのに。
「…僕、グリーン先輩に嫌われたく、ないです。」
ぐすっと鼻をすする音が静かな部屋に響く。ああ、僕
、幻滅されちゃったかな。
「…すき、なんです」
「…は?」
「…え?」
待って。僕、今なんて言った?このタイミングで何言った?
「ちょ、グリーン先輩、僕、今なんて言いました!?」
「…俺のこと好きなのか?」
「うあ、やっぱり言ってたのか…」
恥ずかしい。すごく恥ずかしい。穴があったら入りたい。そろそろ恥ずかしくて死ねる。
「通行人A?」
「せ、先輩、今の言葉…」
忘れてください?…僕は、それを言うために、ここに来たの?わざわざ、そんなこと言うために?
…違う。違うよ。僕は、レッドさんに、友達に、勇気を貰ったじゃないか。勇気を出すって決めたハズじゃないか。その結果が良いとか、悪いとか、関係ない。
「…今の、言葉…」
「通行人A?」
「…忘れ、ないでください…」
い、言った!!僕は言った!!やったよ!僕、やったよ!!
「すき、って言ったの、忘れないでください。」
「…はぁ…」
「な、なんで溜息つくんですか!!!」
「…俺から言いたかったからだ。」
「え、」
「…こうゆうことをあまり言わせるな」
「え、う、はいっ?」
それってつまり、グリーン先輩が僕のこと…
好きってこと?
「う、あ」
「…通行人A?」
「う、う、…」
なんだか嬉しくて、安心して涙がボロボロと零れてきた。さっきの涙とは比べものにならないくらい。
「グリーン、先輩」
「なんだ?」
「僕、嬉しい、です」
その低い声も、その逞しい腕も、大きな掌も、優しい態度も僕は与えてもらえるんだ。グリーン先輩から、飽きないくらい、もらえるんだ。
「先輩、」
「…好きだ」
そしてグリーン先輩は僕の存在を確かめるように抱きしめてきた。
まるで、僕たちだけ時間が止まってるみたいで、幸せに感じた。
もう、何も怖くない。この人の愛さえあれば、僕はなんでもできる、そんな気がした。
「…グリーン先輩」
「ん?」
「僕は先輩が好きです。」
「…知ってる」
「でも他にも先輩のことが好きな人がいるんです。それで、その人たちと…ちょっとイロイロあって…少しの間避けてました。…ごめんなさい」
「…気にしてない」
そう言ってから一層強く僕は抱きしめられた。
「気付かなくて…悪かった」
「グリーン先輩のせいじゃないです。その人達とちゃんと話さない僕も悪いんですよ。気にしないで?」
実際、気にしてほしいけど、迷惑かけるから深く言わなかった。グリーン先輩のこと好きだけど迷惑かけたくないもん。
「通行人A、」
「なんですか?」
「無理はするなよ」
「わかってます!」
グリーン先輩は気付いてて言ってるんだと思う。多分、僕は試されてるんだ。
グリーン先輩に似合う強い女の子になるんだ。だから、もう1回勇気出さなくちゃ!
(勇気を出して!)
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