anemone
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「ね、グリーン先輩」
「なんだ」
「今が幸せって嬉しいことですよね。」
「…そうだな」
-11話-
そう、あれからしばらく時間が流れて、僕とグリーン先輩はすっかり学校公認のカップルという関係になった。…恥ずかしい、けど嬉しい。
「グリーン先輩、」
「なんだ」
「お弁当、です。」
そう、そして今日は初めてお弁当をグリーン先輩のために作ってきたのだ。得意でもない料理を、献立からすごく悩んで、朝早く起きてした。
「…おいしく、ないかもしれないですけど」
「通行人Aが俺に作ったのか?」
「はい、そうです!」
お、おいしさはないかもだけど、愛情はあります!
そう言うと軽く笑われた。…馬鹿、って言われたけど。
「食べて、もら、もらもら、もらえますか!」
「(もらもら…)しょうがないな」
もちろん、グリーン先輩は僕が料理が得意でないことは知っている。それを知っていて食べてくれるのは愛の力かな!
「…」
「な、なんですか?」
「そんなに凝視されると食べにくい。」
「…そ、そん、そ、そ、そんなに見てましたか!」
「俺は穴が空きそうな勢いだった。」
しれっとそう言ったグリーン先輩。いや、ちょっとだけ照れた、とかはないか。…うん、レッドさんならありそうだけど、グリーン先輩はないか。
「じゃ、じゃあ僕は目をcloseしておくので、その間に食べてください!」
ババッと手で目を覆う。うん、これで大丈夫なハズ!
「…」
「…え、あのー、グリーン先輩?」
「食べて、いいんだよな?」
「え…」
心なしか、先輩の声が色っぽく聞こえたのは僕だけなんだろうか。
「…グリーン先輩?」
「少し、黙れ。」
「…っ、」
唇に柔らかい感触。あの、忘れるハズない、味と鼓動の速さ。
「…、っ」
いつもやるキスより長くて、深い。…息が、続かなくて頭がぼーっとする。
「ぐ、りーん、せんぱ…」
「しゃべるな」
先輩が耳元で囁く。ちょっとだけ…くすぐったい。
「ん、」
舌と舌が絡み合う感触は全然馴れてない。多分、キスするの僕は下手なんだろうけど…先輩はそこらへんまで天才的だと思う。
「…は、」
やっとやっと長いキスが終わって、目を覆っている手をやんわりと退かされた。
「…真っ赤。」
「そ、んな、に…見ないでっ、ください…!」
まだ続く荒い息。これ、グリーン先輩のせいなのに。
「人、いなかったからいいですけど…!そ、そんな…キス…」
「…うるさい。」
「…だっ、だって!あんなの、初めてでっ」
「…嫌だったか?」
じーっと緑の瞳に見つめられる。
「い、嫌、じゃなくて、」
「…」
「き、気持ち、よかった…です?」
「なんで疑問形なんだ」
そう言って先輩は笑って、僕を抱き込んだ。僕は先輩に比べて小さいから、すっぽりと収まってしまう。
「…グリーン先輩、これじゃご飯食べれないですよ」
「通行人Aが小さいから大丈夫だ。」
「いや、僕が…」
「食わせてやるから安心しろ」
食わせる…食わせ、る?
え、あの…あーんして?とかそーゆー感じの食わせてやる?
グリーン先輩が、僕、に。…。
「せ、先輩」
「なんだ」
「お、お腹空いたから…食べさせ、て?」
「…!」
少し狼狽するグリーン先輩。も、問題発言だったかな…!
「グリーンせんぱ、…ん、」
口に広がる甘い味。これは今日、失敗に失敗を重ね、ようやくまともになれた僕が作った卵焼きだ。
「俺も半分食べるぞ」
「へ?」
まるでポッキーゲームのような感覚に襲われる。わ、わ、あとちょっとで唇が…
「…通行人A」
「え、な、んで」
「…期待、しただろ」
「…っ!!」
してやられた。見事に。グリーン先輩、結構意地悪だ。
「…酷いです」
「つい、な」
「グリーン先輩の、馬鹿。」
今度は僕の方から唇を重ねた。あ、先輩びっくりしてる。
「期待したに、決まってる」
「馬鹿はお前だ。」
お返し、とばかりにグリーン先輩も唇を重ねてくる。
「…」
「…どうした?」
「…たしかに…馬鹿かも、です」
「素直でよろしい。」
そこでグリーン先輩の背中に両手を限界まで伸ばして、ぎゅーっと力いっぱい抱き返した。あったかくて、グリーン先輩の匂いがいっぱいする。
「グリーン先輩、大好き」
今まで、この関係になるまでいっぱい勇気を使ったし、嫌なこともあったりした。けど、…だけど、グリーン先輩と話して、沢山幸せもらって…この人が傍にいないとダメだって気づいて…。こんな暗い世の中だって、グリーン先輩となら、明るい未来が想像できる。
「…俺は嫌いじゃない」
なかなか好きって言ってくれないけど、充分伝わる、その想い。僕は愛されてるって感じる。
そう遠くない未来で僕はグリーン先輩の隣をずっといられるのか分からないけど、叶うことなら、大人になっても、グリーン先輩と一緒にいたい。
そう願って僕は心地好いその腕の中で静かに瞳を閉じた。
そして時は過ぎていく
***
次回クライマックス!
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