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四六時中、呼吸困難。


今日もまた。

掴み所がなくて、何考えてんのかもわかんなくて、少しばかし頭のネジが緩いらしい、上司、ことはたけカカシ≠ヘ遠慮なんて言葉、まるで知らないフリして人の家に入り浸る。

ソレは、はっきり言ってメーワクで。そんでもってオレはこの人が苦手、だ。







「なると、こっち向いて?」

「やだ。」

「なんで?」

「、めんどくせぇもん。」

「そんなこと言わないでよ、ね?」

「…だってどうせまた、ろくでもねぇこと考えてんだろ?」

「ろくでもない、って。ヒドいなー。じゃあ、まぁ、いーや。」


それっきり、話しかけてこないから。そんなの逆に気になるじゃないか。まぁそれが、このズルい大人の作戦みたいなもんだったりするんだけど、バカなオレは悲しいかな、ソレに気づかずまんまと引っかかるわけで。


「で、なに?」

巻物におとしていた視線を、背後の、もの凄く近くにある気配へと、顔ごと移す。

絶対ぇしてやったり≠チて顔してるんだってば、きっと。なんて、なんだか負けた気分がしながらも、やっぱり気になるオレは苦虫を噛み潰したようなそんな顔を向けてやったのに、


 チュッ


なんて。なんとも可愛らしいリップ音が響いたと同時に、何かが唇に触れた。

何か、なんてそんなのわかりきっているのだけれど、そんな簡単に認めるわけにもいかないから。

「、なに、?」

「んー、キスー」

いい大人が語尾伸ばしたって可愛くねぇのに。何が「キスー」だ。

「わけわかんねぇってば。なんでせんせーが、オレにキス、すんの。」

「アレ?言わなきゃわかんない?っていうか、もう一回していーい?」


「いーい?」なんて聞いたわりに返事をする前にせんせーの唇がオレのに触れた。

「もう一回」どころか、何度も何度も。触れるだけだったのが、今度は啄むように。



アレ。っていうか、なんでオレ、この行為を甘んじてうけてるんだ。

こういうのは好き同士がすることってサクラちゃんが言ってた。だからオレとサスケのは事故なんだ、って。それはそれはもの凄い剣幕で。

そもそも、だ。オレとサスケが、絶対にありえねぇけど仲良しだったとしても男同士なオレたち。

はなからあのちゅー≠ヘ自動的に脳が事故と処理してくれるわけで。一度たりともファーストキス≠セなんて、そんな恐ろしい、鳥肌ものの思考、生憎オレは持ち合わせていない。

だからサクラちゃんが何故あんなにも「アレは事故なんだから!勘違いしないでよね!」なんて念押ししてきたのかはわからない。いくらオレがバカだからって、そんな勘違いはしないのに。少し、しんがい、ってやつだ。

ちなみに、あの日からサスケがうっすら頬染めながらオレを睨みつけてくる理由もわからない。売られた喧嘩は買うのがモットーなので睨み返してやるのだが、そうするとサスケは顔全体を真っ赤にさせてそっぽ向く。耳まで真っ赤。そんなになるまで怒らせた覚えはないのだが、まぁサスケも思うところがあるのだろう。突っかかってこない限りはソッとしておくことにした。オレってば、やっさしーい!




って、今は、そんなの、どうでも、……ンッ、よく、て、……、なんだコレ、息できね、ッ、苦しいってば、……!うあっ、なんでッ、せんせーの、べ、べろ………

「んーッ、ンッ、…ふぁっ、んむぅ」

されるがままの触れ合いに、突然、ヌルッと口内に侵入してきた舌。僅か12歳の、それも人一倍こういうことに無関心な子どもにはそれだけでも衝撃的なのに、大人は無遠慮にも行為をエスカレートさせる。

歯列をなぞり、萎縮して奥へと引っ込んでしまった子どもの舌を探り寄せ、絡め取る。

大人によってどんどん乱されていく呼吸。なのに大人にそんな様子はなく。息継ぎ、なんてどうすればいいのかわからない。

そうこうしている内にも限界は近づいていて。

腕を棒のようにピンと伸ばして距離をとろうとするも大人はピクリともしない。ならば、と、今度は大人の胸をポカポカ殴ってみる。

すると、漸く触れあっていた唇が離れた。

「痛いでしょ?」

「なっ、なにすんだってばっ!」

「んー。だから、キスだって。」

「キス、って。だって……、べ、べろ!」

「ナルト、知らないの?今のはね、ディープキス、って言うんだよー。」

またひとつ賢くなったね、と、頭をくしゃり混ぜながら大人は満足げな声で言う。そして自分よりはるかに長い手足を背後からオレに巻きつける。

「せんせー、」

「なぁに?」

「最近のせんせーはおかしい。初めて会った時から変な人だとは思ってたけど、前にもまして変、だってば。」

「変、って。酷いね、オマエ。」

「だってほんとのことじゃんか。」


大嫌いな野菜を手土産にせんせーはたまに家に来た。その回数がだんだん増えて。冷蔵庫にはついに野菜が入りきらなくなって。

だって野菜は嫌いだし、一応貰ったものだから冷蔵庫には入れるんだけど、料理なんてできねぇし、野菜嫌いだし(これ重要!)、結局入れっぱなしになってしまうのだ。

そしたら今度は冷蔵庫の野菜を減らすためにせんせーはご飯を作りにやってきた。もちろん野菜がメインだから食べる気にはなれなかったんだけど、これが予想以上に旨くって。そんな料理上手なせんせーに、いつの間にかオレは餌付けされてたみたいだ。

だって、冷蔵庫の野菜を使い切るために夕飯を共にしてた筈なのに、使い切ったあともまた新たに補充されていて冷蔵庫の野菜が減ることはなかった。

つまりは、せんせーの上忍としての任務がない限りは一緒に夕飯を食べてるってこと。ちなみに今日は夏野菜カレー。

そんなふうにせんせーは、ジワジワとオレのテリトリーに侵入してきて、バカなオレはソレに気づかずいつの間にかせんせーとの毎日が日常化していて。


「まず。せんせーは何で毎日オレのところに来るんだってば。」

夕飯をともにしない日でも、上忍の任務が終われば必ずせんせーはやってくる。

「嫌なの?」

「嫌、っていうか、」

そんな日のオレは大抵眠ったあとで。朝起きたら何故か隣でせんせーが寝ている。オレにガッチリ巻きついて眠るせんせーに朝っぱらから心臓がドキドキ五月蝿い。

「せんせーのせいで、オレまで変になった。」

「はは、なにそれ。」

日常化したせんせーとの毎日にオレは居心地の良さを感じていた。はずなんだけど、日に日にせんせーの行動や言動に何故だか鼓動が早くなって、息をするのもままならなくなって。




(心を乱す貴方が心底迷惑で、苦手な筈なのに、何故か離れられない)





「せんせー。キス、ってのは好き同士な人たち、つまり、恋人同士がするもんだってばよ。」

「そうだね。」

「だから、せんせーとオレはしちゃいけないの。」

「なんで?オレとオマエは好き同士、でしょ?」

「……そんな、の、初耳、だってば。オレってば、せんせーのこと、好き、なのか?」

「たぶん、ね。」







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