プロローグ-01
数年前、オレが初めて受け持った生徒達も上忍にまで上り詰め。
年功序列なんてものは無く、実力や経験がものをいう忍の世界では、いまや対等といえる関係なわけで。
今までのようにオレが守る立場ではなく、守り守られる……安心して背中を預けて戦える対等、もしくはそれ以上の実力があるからこそ与えられた階級。
教え子たちが心身共に成長し、強くなり皆に認められるということは先生だったオレとしては喜ばしいこと…
なんだけど、実を言えば少し寂しい。
いつの間にか教え子たちも他と同じように「カカシ上忍」と呼ぶようになった。
昔みたく「先生」なんて言わない。
それは当たり前で、どうしようもない事なんだと頭ではわかっているのだけれど、教え子たちが遠くに行ってしまったような、置いてかれてるような、そんな気分になる。
だけど一人だけ。
「なぁ、カカシ先生ってさー」
目の前にいるコイツだけは。
いまだに"先生"って、昔と変わらないトーンでオレを呼ぶ。
もう先生じゃないよ、何度そう言っても、先生は先生だってばよ、と昔と変わらない話し方で笑うんだ。
そんな姿に呆れてみせてはいるけれど、ほんとうは、
嬉しいような照れくさいような、
そして懐かしいような心地良いような、
そんな気分。
「ん、なーに? ナルト。」
何ヶ月かぶりにばったり上忍待機所で会ったオレたちは、久しぶりだし呑みに行く?と、どちらともなく言いだし、気づけば馴染みの店に居た。
二人が会えばいつもこのパターン。
前もって約束なんてした事はなく、偶発的にこうやって、いつの間にか馴染みとなったこの店でお互いの近況報告なんかをつまみに酒を交わす。
この日もオレは、いつものように元教え子の、頑張り、という最高のつまみで美味い酒が呑めると信じて疑わなかった。
だから、メニューをペラペラ捲りながらオレに話しかけるナルトに、今日はどんな話しが聞けるのかな、なんて、年甲斐もなくワクワクしながら答えた。
なのに、
「先生ってさ、オレのこと好きだろ?」
「………は い?」
「いや、だからさオレのこと好きだろ?っつってんの。あ、言っとくけど、元教え子、とか、部下として、とかそんなんじゃなくて、簡単に言えば、んーっとライク、じゃなくてラブ、っつーか、つまり…そう!性的な意味で!」
「……オマエ、酔ってんの?」
元教え子からの予想外の言葉にフリーズしてしまったカカシは数秒かけてなんとか脳を再起動させたものの、動揺を隠せず、
「いや、オレまだ一口も呑んでねーから。」
テーブルの上は見事に綺麗で。
「つか、まだ注文すらしてねーってばよ。」
いつものように飄々と、何バカ言ってんの、とでも言えばよかっただけなのに、ね。
なんでかな、
少しだけ焦ってしまった自分は、見ないフリをした。
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