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アシナガオニイサン


愛なんてものとは程遠くの続き







あれ。

もしかしてオレ、やっちゃった?


目の前の男の驚きで見開かれた目とか、開いたままで一向に塞がらない口だとかを眺めながら少年は思った。

(ってゆーか、オジサンは失礼だったか。思ってたより若ぇし、オニイサン、の方がよかったかな。)

そこまで考えて、止めた。

だってオジサンだろうがオニイサンだろうがそんな事を気にしてみたところで無意味なのだ。

持ちかけた提案に今、尚、フリーズしているところをみるとどうやら今回はハズレのようだ。

(はぁ。人選ミスとか、いつぶりだろう。)

久しい失敗に自分自身少し驚いたものの、そういうことならもうこの男に用はない。

「ごめん、今の忘れてくれってば!じゃあ。」

固まったままの男を揺さぶりながら声をかけ、席を立つ。

男の返事も聞かず、足早に入口へ向かおうとしたところで突然背後から腕を掴まれガクンと体勢を崩した。

「何すんだってばよ!」

危ねーだろ、と振り向きざまに男を睨みつければ何か言いたそうな顔に内心舌打ちした。

(人選ミスどころじゃなかったかも、)

「気分悪くしちまったんなら謝るからさ。だから説教なら勘弁してくんねぇ?」

極稀にこういった類の人間に遭遇する。

例えば。今こうして一人の男が少年の腕を掴み何やら揉めているかのような、そんな図を目にしてもこの通り誰一人として此方を気にする者はいない。

つまり。この賑わう繁華街で、他人に目を向けようなんて者は極々少数。だから声を掛けてハズレだった場合に気分を悪くして怒鳴られたりする事はあるけど(始めた頃はむしろ怒鳴られてばっかりだった)それで終わり。

だけど偶に。説教みたいな、オレからすれば大きなお世話なんだけど、綺麗事並べるだけ並べて自己満足する人が居る。

腕を掴んだままの男は怒ってる様にはに見えないし、だからやっぱり。極めて少数派の、この街には相応しくない人種なのだと己の人を見抜く力はまだまだだな、とため息をついた。



「ねぇ。」

「……はい、(はぁ。説教なら手短にしてくれ)」

だけどそんな少年の考えは見事に覆され。

「説教とか、面倒なことする気はないんだけど、」

「………。」

「…君、ご飯、まだでしょ?よかったら一緒に、どうかな?」






アシナガオニイサン
(同情とかそんなんじゃなくて。)
(だけど理由はわからない。)
(ただなんとなく。)
(もう会えないのは嫌だと思った、から。)








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