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それはね、恋だよ


・七夕に纏わるおはなし。











いつもより任務が早く片付いたから久しぶりにイルカ先生に一楽に連れてってもらおう。と、思い立ってアカデミーに出向いたら丁度授業を終えたらしいイルカ先生と廊下でばったり会って。そしたら頼むまでもなく先生の方から一楽でも行くか!って言ってくれて、ソレに大きく頷くと、支度をするから少し待ってろ。と頭をくしゃりと掻き回された。

ボサボサになんだろ!なんて照れ隠しで悪態吐いてその手を払いのけてから、外で待ってる。と告げて一旦別れた。



アカデミーを卒業してからもう4年程経って、受付には任務できたりもするけどこうやって教室が並ぶこの場所は久しぶりで懐かしい。

来た道を戻りながらアカデミー時代の思い出に浸っていると、ふと教室の中に飾られた、あるものに目が止まった。



(そういえば、もうそんな時期か。)




7月に入ると必ずイルカ先生がどこからもってきたのかバカデカイ笹の葉を担いできて。色とりどりの短冊にみんなそれぞれ願い事を書いて飾ったっけ。

親の居ないオレは七夕≠ネんて知らなくて。だからこそイルカ先生はあぁやってオレに七夕≠教えてくれたのかもしれない。

そうじゃなかったとしても、オレにとってはイルカ先生のおかげで七夕≠知ったのは事実だ。

そしてオレと同じように七夕≠知らない子どもはこれからもこうやって知っていくのだろう。



火影になる!



なれますように≠カゃなく断言された願い事に周りは呆れてた。当時はそんな周りの奴らに腹を立ててたけど今思えば分身の術もまともに出来なかった子どもがオレは火影になるんだってば。≠ニ言ったところでガキの戯れ言、と一笑するのも仕方ないことだと思う。

だけどやっぱり。



(久しぶりに、オレも書いてみっかな。)



飾られた笹の横に置かれた机の上に誰でもどうぞ≠ニ短冊とペンが置かれていて、一番上の、オレンジ色の短冊を手に取った。



絶対、火影になる!



力と想いを込めて綴った願いは幼い頃から変わらぬソレで。

笑われようが呆れられようが、だってやっぱり自分にはコレしかないから。だから、数年前より想いは遥かに強く。絶対≠チて付け足しといた。



開け放たれた窓から温い風が入り込み僅かに笹が揺れる。
飾り付けたオレンジ色の短冊を満足げに眺めていると、ふと、隣で揺れる銀色の短冊が目に入り、一瞬思考が停止した。



あの子が振り向いてくれますように



一見可愛らしい願い事。別段珍しいというわけでもない。

でも。

控えめに書かれた願い事の筆跡は、とても子どものものとは思えない程に達筆で。というか、ナルトはこの字に見覚えがある。



『せんせー、まだ書き終わんねぇの?』
『んー、もうちょっと待って。』
『もう、早く終わらして修行見てってば!』
『はいはい、っと。よし、書けた。じゃあコレ出しに行こうか。修行はそれから。』



そう。それは何度も目にした事のある銀髪の上司が書いた報告書の字と酷似していて。

だけどあの上司がこんなことするとは思えない。というか、七夕なんて興味なさそうだし、そもそも七夕を知っているのかさえ怪しい。

だけどやっぱりどう見てもあの人の字なのは確か。……というか、

(この短冊が、カカシ先生のものだとして。)

あの子が振り向いてくれますように

(…カカシ先生、好きな人、居るんだ、)



なんでだろう。モヤモヤする。

カカシ先生はオレ達の先生で、彼女とか、そういう人がいるとか想像もしてなかった。いや。この場合まだ彼女じゃなく、先生の片思い…。

左の、胸のあたりがぎゅーって鷲掴みされたようにイタイ。

この願い事が叶ってしまえば先生はオレたちなんかより彼女を優先するんだろう。そんなの、

(……叶わなければ良いのに、)

なんでそんな事を思うのかわかんないけど。でも。修行を見てもらえなくなる、とかそんな理由じゃないことは確かで。

つまりは純粋に。先生はオレたちの……、オレの$謳カであってほしい。

やっぱりなんでかなんて、わかんないけど。



ナルトは思い立ったようにペンを手に取りスラスラと文字を綴る。書き終えると1枚目とは反対側の銀色の短冊の横にくくりつけた。



銀色の短冊を挟む2つの短冊。



絶対、火影になる!
ひとつはオレンジ色した短冊。



そしてもうひとつは金色の短冊。



願い事は…



ずっと、オレだけの先生で居てくれますよーに











***

「ナルトー、お待た……」

「あ、イルカ先生悪ぃ!用事できたから一楽はまた今度連れてってくれってばよ!」

「え、あ、オイ!用事って…、」

「ちょっとカカシ先生んとこ行ってくる!」











(火影になる、ってのは絶対叶えてみせる。でもまず、もういっこの願い事も叶えてみせるってば。)
(待ってろよ、カカシ先生!)












絶対にバレないだろう、とこっそり願い事書いちゃう乙女なカカシ先生。
あの子≠ヘもちろんナルトくん。
うん、だから結果二人とも願いが叶っちゃうんだよ!(ナルトは無自覚だけど)


title:確かに恋だった






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