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恋は盲目


中学時代。野球に青春を捧げたと言っても過言ではなかったオレは当然、高校でも野球をするもんだと周りは勝手に思ってて。

実際、オレにはそんな気サラサラなく。バイトして、遊んで、恋愛して。中学時代野球しかやってこなかったかわりに高校では自由気ままに青春を謳歌するつもりだっだ。

だけどソレを、先輩方が許してくださる筈もなく。

「こら、ナルトー!今日という今日は、コレ出すまで逃がさねーからな!」

なんて、入部届片手に追いかけてくる中学時代からの先輩たち。

「だーかーらッ!オレは部活には入らねーっていってんだろー!先輩たち、いい加減、諦めろって!しつこい男はモテねぇーってばよ!」

ソレを全力で逃げ回るのは、コレで何日目だろうか。

先輩たちは毎日トレーニングしてるし、そりゃ体力もあるだろう。だけどこっちは野球部を引退してからというもの風呂上がりの軽い筋トレと、学校での体育でぐらいしか身体を動かしていないんだ。もうちょっとこっちのことを考えてくれてもいいと思う。いや、考えてくれるような人たちだったらこんなことは毎日繰り返されていないだろう。



(あぁ、そろそろ限界だってば…)

まだ慣れていない校舎内。走るルートが自然と毎日一緒になってしまっていて、今日も昨日と同じ門を曲がる。そうしてこの場所を通り過ぎ、校庭を駆け抜けることが出来れば先輩たちとの追いかけっこは強制終了なのだが。(先輩たちは部活があるから学校の外までは追いかけてこない)


 ガラッ


タイミングよく教室の扉が開かれたかと思えば


 グイッ


力任せに腕を掴まれ引きずり込まれた。



予想だにしていなかった出来事に混乱していると、背後からかけられた声が現実へと引き戻す。

「ココ、図書室。わかる? 毎日毎日、うるさいんだけど。追っかけっこなら余所でどうぞ。」


自分たちが悪いのだと考えればわかるのだけれど、いきなり引きずり込まれたかと思えば冷たい声色で淡々と注意されたものだから、つい。

「オレだって好きで毎日こんなことしてんじゃねぇ!被害者だっつーの!文句なら、しつこい先輩たちに言ってくれってばよ!」

だってそうだろう?何回断っても諦めずに毎日追い回しているのは先輩たちで。おかげで放課後は丸つぶれ。念願だった放課後ライフは未だ実行されていない。

そのうえ被害者であるオレが注意をうけて。

こんなのあんまりだ!と、今日までの日々を嘆きながら声の主を振り返り、ハッとする。


「……ッ、」

「…だからココ、図書室。君が被害者だとかオレには関係ないけど、こうも毎日煩いと迷惑以外の何ものでもないし、アイツらにはオレからも言っといてあげる。野球部の奴らでしょ?」


そう、オレはココが図書室だってことを、一番最初に、っていうか注意された原因なのに、バカなオレはカッとなってそれはそれは、キレイさっぱり忘れてて。

声を荒げて振り返ってみればそこにいた全員の鋭い視線がつきささる。

だけどそんなことよりも、振り返ったことにより対面する形となった声の主へとオレの全神経はもってかれた。

開け放たれた窓から入り込む緩やかな風に無造作な銀色の髪が靡いていて、眠たそうな、やる気を全く感じさせない視線が自分の頭ひとつぶんくらい上から見下ろしているんだけど、なんていうか。

(…キレイ、だってば、)

女とか男とかそんなの関係なくて。というか、女の人にもコレほど目を奪われたことなんてない。

目が離せなくて、ピクリとも動かないオレをその人は怪訝そうな顔で見てる。

隠すことなく眉間にシワをよせたその顔もやっぱりキレイで、ドキドキ心臓が五月蝿い。


「えーっと、なに?オレの顔になんかついてる?」

鼓膜に響く、低い声。

先ほど冷たいと感じた声色は、どうやら態とというわけではなかったみたいで。

冷静になったいま、その低音にクラクラする。

視線を顔から足下へとずらせば、紺色のラインが入った上履き。ソレはこの人が自分よりひとつ上ということを表していて、先ほど野球部の先輩たちのことをアイツら呼ばわりしたのにも納得いく。

この人は、先輩たちと同期で2年生。

たったひとつ。たかが学年をしれただけで喜んで、もっともっとこの人のことを知りたい、なんて考えてる自分は、おそらくこの人に恋をしてしまったのだろう。

視界に入れた、その瞬間に。所謂一目惚れ、ってやつを。





「あの、オレ、うずまきナルトっていいます。」

「は…?」

「いや、だから。名前。オレの名前、うずまきナルトっていいます。」

「あぁ、うん、そう。……で?」

「…先輩、は?」

「え、オレ?」

「はい。」

「はたけカカシ、だけど、」

「……はたけ、カカシ。カカシ、先輩、」


一体なんなの?と怪訝そうな顔をしながらも素直に答えてくれることが嬉しくて堪らない。


(あぁ、もう、ダメだってば、)




「ッ、カカシ先輩!!」

「…、はい。」

「好きです!一目惚れ、ってやつです!だから、お付き合いしてください。ってば!!」



盲目
(だとか、よく言うけど、)


「……ねぇ、」

「ッ、はい!」

「…だから此処、図書室だってこと、忘れてない?」

「…………ッ!」



TPOを、わきまえて。
(けど、嫌じゃなかった、なんて。可笑しい、カナ?)






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