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プロローグ-03







「勘、だってばよ!」

「………。」






数秒でも頭を悩ませた自分がバカだった。
何の確証もないくせに突拍子もない事を言ったり、やらかしたりするのは昔からだと言うことをすっかり忘れていた。



自分じゃないか、

"意外性NO.1のドタバタ忍者"

そう、コイツに名付けたのは。














「せーんせー!かぁーしせんせーってばぁー」

「なによ。」

「まだつかねーのー?ヒック」



あのあと、ここが居酒屋で誰が聞いてるとかそんなこと一切関係なしに、見当違いな事をただの勘で言い出した事についてみっちり説教したのだが。

酒の席で説教される、というのが気に入らなかったのかなんなのか、ナルトは浴びるように酒を呑み、その結果が



「せーんせーってば、はやくつれてかえってばよぉー」

コレ、なわけで。

「ホラ、着いたよ。」

上忍になり、収入が増えたにも関わらず昔よりも更に劣化したアパートに住み続けているナルト。



引っ越さないの?

一度問うたオレにナルトは言った。

忘れたくないから、と。



何を、そう尋ねれば



「大切な人との思い出、かな?」



切なげに眉を潜めてそう言ったナルトにそれ以上何も聞けなかった。






大切な人って、誰?






あの時聞けなかった疑問は今も胸に引っかかったまま。








「ほら、早く鍵出して。」

「んー、あっれーおかしいってばぁー。」

ありとあらゆるポケットを弄りながら嘆く姿に世話がやけるな、とため息が漏れる。

「まさか無くしたの?どーすんのよ、ったく。」

「うー、んー、えーっとぉー……あ!まど!!まどがあいてゆはずだってばぁ!」

そう言って覚束ない足取りでアパートの階段を下りるナルト。

「なんで窓あけてるの!襲われでもしたらどーするの、バカナルト。」

足がもつれ階段から転げ落ちそうになったところをカカシは抱え込みながら注意した。






「…おそわれてぇーの、なんてな。」

サンキュ、と態勢を立て直しながら小さく呟いたソレをカカシは聞き逃さなかった。



「ナル…」

どーいう意味?そう問いかけようとした瞬間、

「っ、じゃーな、せんせー!ありがとーってばよ!!」

スルリ、とカカシから身体を離すと今の今までフラフラだったのが嘘だったかのように軽い身のこなしで階段を駆け下り、外にでるとヒョイと地面を蹴り上げ屋根の上に乗り上げた。



酔ってるんじゃないの、だとか思うことはたくさんあるけれど、オレはナルトの後を追って外に出るのが精一杯で。



見上げれば、心地良い風にユラヨラ揺れる昔より少し伸びた金色の髪が手を伸ばせば届くのではないだろうか、そう思ってしまうほど近くにある満月が照らしていて。







「…せんせーはさ、ほんとーにオレのことすきじゃねーの?」

その幻想的な光景に思わず見惚れてしまっていたオレを我にかえすには十分すぎる言葉が落ちてきた。

「ったく、またオマエは……さっきも言ったでしょう?何の確証もない事をこんな誰が聞いてるかもわからないところで…」

「なーんだ、やっぱりちげーの?」

「だからさっきからそう言ってるでしょ。」

「………………のに。」

「え?」



「…そーだったらよかったのになー、って。んじゃ、おくってくれてサンキューな!おやすみだってばよー!!」






言うなり窓をガラリ、と勢いよく開け、振り返ることなく部屋の中へと消えた。



――ピシャ、ガチャリ。



窓はすぐに閉められ、普段は開けっ放しらしい鍵は今日に限って何故か施錠され。






それはまるで、二人の間に壁ができたみたいに。









「………今のって、どういう、」

決して暖かいとは言えない寒空の下、

残されたカカシはポツリ、呟いた。









プロローグ
(始まりは今か、それとも、)





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