うぉーあいにー
「…どうしたの、」
先生に何か用?と、解散を言い渡した筈なのに自分の側から離れようとしない金色に問いかける。
いつもなら、サクラちゃーんなんて、意中の子に駆け寄って、あれやこれやとモーションをかけている筈なのに。
現にサクラは自宅へと足を向けてはいるものの、物足りなさを感じているのかチラチラと此方を振り返り、様子を伺っている。
それに、少しの優越感を感じながら、
…あぁ、さては、
「一楽、連れてけって?」
何か言いたげな表情のくせして何も発せない金色に、正解でしょ?と笑みを向ける。
なのに金色は、ふるふると横に首を振る。
「じゃあ、どうしたの、」
金色の隠れた表情を伺うように屈み込み、再度問えば、
「…うぉーあいにー」
「……、は?」
小さく呟かれたソレ、に、咄嗟に漏れたマヌケな声。
ソレを金色がどう捉えたのかは検討もつかないが
「…うぉーあいにー、て、先生、知ってる?」
………、
「んー、先生ちょっとわかんない、」
少しの沈黙のあと、なに?ソレ、と眉を下げて、教えて?と困った顔をすれば、金色はやっと笑みを漏らした。
「せんせーってば、知んねーの?」
バカにした口調だが、向けられた笑みにはどこか安堵の色を浮かべていて。
「うん、だから教えてよ。」
懇願してみせれば金色は、あの、イタズラっ子のような、何か企んでいるような、そんな顔で
「嫌だ、教えねーってばよ!」
そう言って、じゃあオレ帰る!と背を向け走り出した。
え、と肩すかしをくらったオレは、金色に制止の言葉をかけるのも忘れて。
「…結局、何がしたかったの、あの子、」
走り去る金色の背中にボソッと呟いた。
すると、その声が届いている筈もないのだが、タイミングよく金色の足がピタリと止まり、クルリと身体を此方に向けて、
「せんせーっ!うぉーあいにーーー、だってばよ!!」
両手を口の横に添えてそう叫ぶと、また、クルリと背を向け走り出した。
…ナルト。
オマエ、ほんとバカ?
うぉーあいにー、
……こないだ任務でいった異国の国の言葉でしょ?
一緒に行ったオレが知らないわけないじゃない。
珍しい異国の言葉にサクラと二人でキャーキャー騒ぎたてて、
「あれはどう意味だ」とか「これはこの国の言葉で何て言うの」だとか、色々尋ねてたじゃない。
―――なぁなぁ、あいしてる、って何て言うんだってば?
てっきりサクラに向けられる言葉だと思ってた。
…ね、期待しても、いいの?
――あぁ、でもやっぱり、もう少し待つことにする。
あいしてる、
異国の言葉ではなく、聞き慣れた言葉で、オマエが愛を伝えてくれるのを、ね、
うぉーあいにー
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