サーディン side 「え・・・」 次にあの子に会ったのは店だった。 「今日から働いてもらうから。えっと名前は苗字名前。というわけだからー・・・」 響さんに紹介されているその子を見てビックリした。その子は紛れも無く先日出会って、僕の家にいて、気づいたら居なくて。 響さんはまだしゃべっていたけどまったく頭に入ってこなかった。 一瞬目が合う。 その子もビックリしているようで目を丸くしたけどすぐに目を反らされた。 まったく状況がわからない。 そうしている間に響さんとその子、名前さんはフロアの方へ行ってしまった。 声を掛けようにもなんと言ったらいいかわからない。 「知り合いか?」 そんな僕に気づいたのか琴っちに問われた。 「いや、・・・。」 「今朝、店の前で拾ったんだと。家出かなんかだろな、あれは。」 何も言わない(言えない) 僕に琴っちがそういった。僕の家を出た後も居場所を探していたんだ。ならなんで居なくなったのだろう? 頭の中で考えるが上手く答えが見つからなかった。 「居たいだけ、」 「え?」 「居たいだけいろと言ったらしい。」 『居たいだけ居ればいい』 懐かしい響きだな。僕もいつしか言われた事がある。 その時に一番欲しい言葉を響さんはくれる。 見ていないようで、一番見てくれているんだ。僕にはなくて、響さんが持っているものだ。 2008.05.29 UP 連載『ひとりはみんなの為に』 005 欲しい言葉 お戻りはブラウザバックでお願いします |