女の子 side 目を覚ましたらまったく見慣れない天井が目に写った 辺りを見回してみても、やっぱり見たこと無い部屋が広がっている シンプルなカーテン 山積みの洋服 床に散らばった本 奥に見える灯 狭い部屋を出てぼんやりする頭で明るいほうへ歩いてみる。 小さいキッチンにはラップのしてあるお皿 少し触ってみたら冷たかった。 ―ここはどこだろう?― さっき横になってたベットの前にクッションがあったからそこに座る。 そういえば、洋服も自分のじゃない 男物のTシャツ 辺りを見回してみると、わかった。ここは男の人の部屋だ。 それからしばらくして足跡が聞こえてきた その足跡はぴたりと止まり すぐ後にガチャっと扉が開くような音がした。 思わずビクリとしてしまう 手にはクッションをしっかり握り締めて 「ただいまー」 ちょっと控えめの声。 すぐ後に部屋に灯りが付いた。 「あ、起きてたの?電気つければいいのに〜」 誰だろう? ぼんやり考えていると昨日の記憶がかすかに蘇った どうやら昨日の人で、ここはこの人の部屋らしい。 「起きれるなら大丈夫だね。きみね〜昨日すごい熱あったんだよ?あ、ご飯食べなかったんだ。ダメだよ〜ちゃんと食べなきゃ!」 その人がしゃべり続けながら部屋を行ったり来たりするのを目で追う 「お腹空いたっしょ?」 いきなり目の前で聞かれ、またクッションを握り締めた。 ビックリしたけどその人は笑顔で 私は小さくうなずいた。 そしたらまた笑顔になって「ちょっとまってて」といってキッチンのほうへ行ってしまった。 「あ、君。名前は?」 キッチンでてきぱき動く後姿を見ていたらそう問われた。 動きは止めずに顔だけこちらを見ている 名前… 「ない...」 「え?」 聞こえなかったのかその人は動きも止めて耳を傾けてくれたけど、私は口を開く事が出来なかった 2008.05.03 UP 連載『ひとりはみんなの為に』 003 目が覚めたら お戻りはブラウザバックでお願いします |