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偽り
39

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「………あの、すっごく近くないでしょうか?」
「近くない」
「………プリントに集中出来ないんですけど…」
「しなくていい」
「…いや、それじゃ俺が怒られるんで…」
「じゃぁ、このまましたらいい」
「………」


今は放課後で俺は使われていない空き教室にいた。授業のサボりすぎで先生に罰として課題を出されてしまい、いやいやながらも必死にプリントを解いていた。しかし、それを邪魔する者が1人俺の横にいる。とても近い。ほんとは相良に手伝ってもらおうと図書室に向かっていたのだけど、またもばったりとあのつくもれんに会ってしまい、有無を言わさず空き教室に連れ込まれた。なんて運の悪い自分なんだと思ったが、仕方なく課題をするため椅子に座った。もちろんつくもれんの隣にだ。目が横に座れと言っていた。恐かった。そして、異常に近い。
顔が近すぎて課題どこじゃない。だけど、見ての通り言ってもどうしようもないからもう知らない。
無言で課題に集中する。途中分からない問題があって俺の手が止まった。

「…………」
「どうした?」
「…いや、ここの問題がわからない、んです…」
「…………あー、ここは」

そう言うと紙に書いて分かりやすく俺に教えてくれた。あまりにも意外すぎて普通に関心してしまった。


「すげー、めっちゃわかりやすい」
「…………」
「うぉぉぉ」

つくもれんの顔が急に近づいてきてびっくりした俺は椅子から落ちてしまった。

「……な、なんで顔を近づけるんですか…」
「キスしようと思った」
「……なんでキスしようと思うんですか…」
「なんか可愛かった」
「………」


答えの意味がまったくもってわからない。どこにそう思う場面があったのか。課題なんかよりつくもれんがよっぽどわからない。
とりあえず、椅子には座らず椅子を壁にして顔出してつくもれんを見た。



「…もう、キスしようとしないで、ください…ね…」
「…………」
「…無言はやめてください」
「しないのか?」
「……普通、友達はキスなんかしません」
「俺はする」
「……俺はしません」
「………」
「…だから無言はやめてください、怖いです…」


無言で睨んでくるつくもれんが怖くて俺は視線をそらした。

「ゆずる」

急に名前を呼ばれたもんだから反射的に視線をつくもれんに向ければチュッと軽くキスされた。


「なっ……」
「これで我慢する」
「………」


ニヤリと笑って言ったつくもに何も言えなくなった俺はなんだか恥ずかしくなってプリントと筆記用具を持って慌て教室から出ていった。これからこんなことが何度もあるのかと思うと俺は憂鬱で仕方なかった。
とりあえず、この気持ちを相良にぶつけようと図書室に向う俺であった。




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あきゅろす。
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