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偽り
35


「……っ…………ふ」


何度も角度を変えてキスをしてくる。腕をおもいっきり押しつけられていて身動きが取れない。そしてあろうことか舌まで入れてきやがった。


「…ふ……っ…………ん」


俺はそのキスでおかしくなっていた。
何も考えられないまま長い時間キスをしていた。いや、そこまで長くなかったのかもしれない。時計の針の音がやけに大きく聞こえた。


「…っ…ふ……はぁ…はぁ…」


ようやくキスから解放された俺はそのままずり落ちるように座り込んだ。
だんだん思考も戻ってきた。…俺は何をやってしまったのか。あの、つくもれんとキスとかありえない。何よりも感じてしまった自分が一番ありえない。…消えたい。ここから消え去りたい…。


「……大丈夫か?」
「はぁ…なんで、僕…なんか、と…はぁ…はぁ」
「……まだやんだ、それ」
「え?」


しゃがんで俺の耳元で俺、全部知ってるからと言ったつくもがよくわからなかった。…どういう意味だ?


「俺、見たんだよな、お前が猫かぶってんの、だから意味ないんだよ、その演技は」


目薬作戦大成功とまた耳元で言ったつくもの言葉で全てを理解した俺はとてつもなく脱力した。
ということは今までの俺の演技は無駄だったってことか?それを見てこいつは楽しんでいた?
はは、なんだよ、それ。そんなのあっかよ。
俺、めちゃめちゃ恥ずかしいじゃねぇか。


「……見てて、面白かったですか?」
「あぁ、面白いと思った」
「……ははは、そりゃそーですよね…」
「……欲しいと思った」
「え?」
「お前のことが気になって、気づいたら欲しくてたまらなくなった」
「え、いや、あの、話が全く見え」
「俺はお前が欲しい」
「なあぁぁぁぁ」

話してる途中に顔が近づいて来るもんだから俺は逃げた。はって逃げた。
少ししか離れなかったけど、キスは回避できた。
というか、なんであれからこんな流れになるんだよ。しかも、俺にキスしたこと自体が間違いだ。俺はあんたに好かれる覚えはない。だから俺を返してくれ…。そんな俺の願いは叶うわけもなく、またつくもに追い詰められている。


「逃げるな」
「逃げます、いきなりキスする人とは一緒にいれません。」
「キスの何が悪い」
「いや、付き合ってもないのに…というか、ほぼ初対面だし、男だし、」
「ここはそういうとこだ」
「………あー、俺は、って、待て待て」
「待てない」
「…少し落ち着こう、とりあえず顔を近づけるのは無しでお願いします」
「………」


しぶしぶながらも顔を引いてくれたつくもだけど、状況はあまり変わっていない。どうにかして、この場をやり過ごさなかければ。
…よし、もうこの際仕方ない。後のことなんて知ったことか。今、この状況が回避出来ればそれでいい。
そう思った俺は画期的な方法でなんとかこの場を抜け出すことが出来た。それはすごく勇気のいることで俺は頑張ったと自分を自分で褒めていた。




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