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偽り
33

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「んっ、…はっ…俺…寝てたのか……」

そう独り言のように呟いた後、俺は驚いた。目を覚ました俺の目の前には長身の男が後ろを向いて立っていた。正確に言えば鏡の前にだ。…服装がどこかおかしい。ピンクのもふもふした着ぐるみみたいなのを着ていた。そしてフードをかぶった頭の上には長い耳がある。うさぎだ。巨大なうさぎだ。

俺はパチパチと瞬きを繰り返しながら目の前にいる人を見ていた。てか、びっくりしすぎて視線を動かせない。

「……あっ」
「あー、起きたんだ」

ガラスの中でその人と目があってしまい起きてることに気づかれてしまった。

…ところで、俺はどこにいるんでしょうか?つくもれんに追いかけられてどっかの更衣室に入り込んだのはわかっている。じゃぁ、ここはなんだ。なんで、あの、風紀委員副委員長、小清水風依〈コシミズフウイ〉がここにいるんだ?しかも、なんかよくわかんない服着てるし。なんだあれは、ファッションか…。

「おぉ、」
「どうかした?」
「いえ、何も……顔近いです、よ」


あ、ごめんねと顔をどかしてくれた副委員長。
なんで顔を近づけたんだ。というか、俺めちゃくちゃ見られてません?


「あの、何か…僕にようですか?」
「ん?…君、驚かないんだ」
「………」

やばい…。ここは驚くべきだったか。もっと声だして驚くというか喜ぶべきだった。しくった。

「どうかした?」
「ぼ、僕、小清水様のファ、ファンでびっくりしすぎて声も出ません、でした」
「え?俺のファン?」
「そうです、…ずっと仲良くなりたいなと思ってたんです」
「そーなんだぁ」
「はい」
「じゃぁ、友達なろっか?」
「へ?」


にっこり笑う副委員長がありえない言葉を言うもんだから変な声が出てしまった。友達?え、俺とあなた様が?ないない。てか、無理です。心の準備も出来てません。


「俺とじゃ友達になれない?」
「いいいえ、そ、そんなことは…」
「じゃぁ、」
「あ、でも、僕なんかと友達に…なっても…」


ほら、いろいろと困るじゃないですか、俺が。

「大丈夫、俺がいいって言ってんだから」
「…え、ですけど…」
「ねぇ?」
「いや、その…」
「………」
「………………はい」


よかったと言って俺と握手を交わす。俺は無言の視線に負けてしまった。だってさ、だんだん顔近づいてくんだもん、そりゃぁ、オーケーも出したくなりますよ…。

「…あ、あの、小清水様「いやだ」」
「え?」
「その小清水様って嫌だな」
「いや、だけど、小清水様は小清水様で…」

俺は目立ちたくないんです。…ほんとに。


「えー、あ、じゃぁ、小清水先輩ってのは?」
「………じゃぁ、それでお願いします…。」


あの笑顔に何を言っても無駄だ…。無駄なやりとりはしたくなかった俺はいやいやだけどオーケーした。…俺、この人苦手だ。だって…いい人なんだよ。俺の良心が痛む。未だ副委員長の格好がわかんないけど。聞くタイミングを逃した。



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