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偽り
28


「ヒぃーロぉぉぉぉー」

勢いよく教室のドアを開けヒロの名前を呼んだ。
視線が俺に集中する。


「あれ?ヒロは?」

居ると思っていたヒロの姿がどこにもなく、俺はキョロキョロと目線を動かしていた。


「吾妻くんなら何分か前に出ていったよ」
「あ、……そうなんだ」

クラスメイトの1人にそう言われて俺は一瞬びっくりした。俺のクラスは他の奴らよりはいいやつばかりだけど、話掛けられたのはほとんどなかった。だから話掛けられたことが嬉しくて少し動揺した。

「ねぇ、さっき呼ばれてたけど、」
「え?…あ、生徒手帳落としてたからもらってきた、…んだけど」
「あ、そーだったんだ」

なーんだと言うようにクラス全員が安心した声を漏らした。…みんな気にしてたのか。
それから俺はクラスメイトの何人かと話ながら学園祭の準備をした。意外とみんないいやつでなんだかんだで楽しかった。ヒロは放課後も帰って来なかったけど、何度かこんなことはあったからあまり気にしないで作業に取り組んでいた。一応、メールはしておいた。

****

「いるかな…」

図書室の前に立ってドアを開けるか迷っていた。
さっきヒロから返事があって先帰っていいとの内容だったから、帰る前に図書室に寄ってみようと図書室にやってきたのだ。ちょっと緊張する。しかも、あれから1週間近く経っているのもあって今更感が否めない。絶対なんか言われる。そんなことをうだうだ考えている俺は後ろの気配に気付かなかった。


「入るの?入らないの?そこにいるとすっごく邪魔なんだけど」
「おぉ!」

ばっと後ろを振り返れば呆れて立っている相良千里がいた。…気付かなかった。

「驚きすぎ、さっさと入ってよ」
「え、あ、はい…」

相良に言われて慌て中に入った俺は、入り口の端の本棚に背中を張りつけて立つ。相良はそのまま足を進めて奥の椅子に座った。




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