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偽り
26

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デカい扉を前に俺は深呼吸を何度もしていた。
…入りずらい。一度も風紀委員室に入ったことがない俺は怯えていた。いや、誰だって恐いと思う。だってあの委員長だし。
そう思っても入らないことにはどうにもならいわけで、俺は思い切ってドアをノックした。
中から入れと声が聞こえ、俺は中に入った。


「…失礼します」

自分でもびっくりするくらい小さい声しか出なかった。…俺ってチキンだ。

「佐藤ゆずるだな?」
「…はい、そうです、」

一番大きい机の前に座っている委員長に言われ俺はなんとか返事をした。風紀委員室には委員長の他に副委員長もいらっしゃった。

「そんなに怖がらなくていいんだよ?ただこれを渡すために呼んだだけだから」

副委員長が俺のとこまで来て俺に生徒手帳を渡した。

「え、これ俺のですか?」
「そうだよ、中確認してみたら?」

副委員長に言われ中を確認すると、俺の名前と顔写真が貼ってあり、紛れもなく俺の生徒手帳だった。
俺は今の今まで生徒手帳を落としていることに気づいていなかった。…いつ落としたんだろ。

「もしかして、落としてたことに気づいてなかったの?」
「……はい」

笑いながら返事をすると、委員長に自分の持ち物くらいしっかりと管理しておけみたいなことを言われ、俺はすみませんと謝っていた。やっぱ委員長怖い。


「そんな風に言わなくたって!この子が可哀想」
「…い、いえ、俺が悪いんで、それにわざわざ教えてくれてありがとうございました」

では、俺はこれで、と後ろを振り返ってドアのぶに手を掛けようとしたとき、勝手にドアが開いて中に人が入ってきた。俺は咄嗟に横に避けてその人が通りすぎるのを待っていた。


「……見つからない、」
「あ、おかえりー、つくも」

副委員長が言った言葉がつくもと聞こえ、まさかと思って下げていた頭をばっとあげると目の前にはあの見覚えのある顔があった。何かを感じ取ったのかつくもはゆっくりと俺がいる方を向いてそして、俺と目が合った。

「……あ、い「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁー!!」


俺は自分でもびっくりする声で叫んでそのまま勢いよくドアを開けて風紀委員室を飛び出していた。そこから猛スピードでヒロがいる教室に走って逃げた。もう無我夢中だった。




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