それが恋、それが愛 21 遥side 「日野っ!!」 ばんっと勢いよく保健室のドアを開けた俺は目を疑った。 ベッドの上には頭に包帯を巻かれて寝ている日野がいて、そのすぐ横には椅子に座って日野を見ている椎名がいた。 「……日野…」 俺はベッドに近づいて、日野を呼んだ。 日野から寝息が聞こえてきたのがわかって、俺はほっとする。 「……桜木か?」 「…………先生」 保健室に入って来た先生に声をかけられ、俺は先生のもとに駆け寄った。 「先生、日野は…」 「大丈夫だ、頭を石か何かで少し切っただけだ、心配はない」 「………そうですか」 「だが、頭を打ってる可能性が高いし、出血も多かったから、とりあえず病院には連れて行く」 「…………」 「そんな心配すんな」 そう言って先生に頭を軽く叩かれた。 「まぁ、連れて行くのは明日になるだろうから、起きたら伝えといてくれないか…」 「………わかりました」 「あ、だけど、授業にはちゃんと出ろよ」 「…………はい」 先生はそう言ってドアに向かう。 「あー、それから、そいつに、ちゃんと授業に行くよう言っといてくれないか?」 「…………え?」 「俺が言っても動こうとしないから」 「………はい、先生は?」 「俺は、日野の親に電話してもらうよう、担任に頼んでくるわ」 「わかりました…」 そう言って、先生が保健室を出て行くのを確認した俺は、日野の傍に近づいた。 「………お前、怒らないのか…」 「え?」 椅子に座って日野を見ていた椎名が突然口を開く。 椎名の問いがわからなくて椎名に聞き返した。 「……怒る?」 「……日野がこうなったのは全部俺のせいなんだぞ…」 「…………」 「…それでも、お前は怒らないのか?」 「………怒らない」 「何故だ…」 「……全部椎名が悪いわけじゃない…」 「………全部俺のせいだよ…」 「もしも、本当にこれが椎名のせいだったとしても俺は怒らない…」 「………どうしてだよ」 「日野が、 …それを望んでないから…」 「…………っ…」 俺がそういうと椎名は何も言わなくなった。 俺の言いたいことがわかったのか、椎名はまた黙って日野を見ている。 「……椎名、教室に…」 「…日野も変わってねぇけど、お前も変わってねぇな…」 「………椎名…?」 「……俺は戻らねぇよ…」 「………わかった」 今の椎名に何を言っても無駄だと思った俺は、そっと保健室を出た。 最後に椎名が呟いた言葉が気になったけど、授業のチャイムがなっていたから、俺は急いで教室に向かった。 遥side終わり [*前へ][次へ#] |