それが恋、それが愛
8
「歩、遥くんってのは、もしかして、桜木遥のこと?」
電話帳に遥くんと登録されている名前に心当たりがある透真は、携帯を見ながら俺にそう聞いてきた。
「う、うん、…高校が一緒だったんだ…」
「…ふーん」
俺と遥くんと透真は小学校が一緒だった。
だから、当然、透真は遥くんのことを知っていて、そのときの遥くんだとわかった透真は気のない返事をして、また携帯を弄り出した…。
「それじゃぁ、今日、遊んだ友達って、桜木?」
「いや、遥くん……
……です」
そんなことを聞いてくる透真に、俺は咄嗟に嘘をついた。
少しの沈黙の間、おそるおそる、透真を見た。
…そう言わないと危ない気がした俺は、椎名のことを隠していた。
だけど、透真には通用しなかったらしく、にっこり笑って俺を見ていた…。
「嘘だよね」
「…はい、そうです、ごめんなさい」
これ以上、透真の機嫌を損ねたくなかった俺は、正直に嘘を認めて、謝った。
「歩だから許すけど、嘘はダメだよ」
「………はい」
「………ところでさ、
椎名カイリってだれ?」
唐突に嫌な質問された…。
心の中だけで嘆く俺は、今すぐこの場から逃げ出したかった。
だけど、逃げても無駄だと思った俺は、逃げたい気持ちを押し殺して、踏みとどまる。
必死に平然を装いながら、透真の質問に答えた。
「…………友達だよ」
「その間はなに」
見事玉砕した…。
俺には平然を装うことなんて出来ないんだ。
無駄な努力だったんだ…。1人、自分の腑甲斐なさに泣いていた俺に、透真は椎名のことをしつこく聞いてきた。
「椎名カイリとはいつから友達?」
「……高校、入って、かな…」
「じゃぁ、会ったのはいつ?」
「中学のとき…」
「1年から?」
「………た、たぶん」
「んじゃぁ、「ちょっと待って…、」
次から次に椎名のことを聞いてくるもんだから、途中でストップをかけた。
「なに?」
「あのさ…、なんで、そんなに椎名のこと、聞いてくんの…?」
「知りたいから」
「え?」
僕は歩に関わる人全員、知っておかなきゃいけないんだよ、と満面の笑みで言われて、俺は少し戸惑った。
なんで俺に関わる人、全員なのかとか、知っておく必要があるのかとか、俺にはよくわからないことばかりで、俺は少し…透真が怖いと思った…。
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