それが恋、それが愛
4
「…歩、俺に喧嘩売ってんのか?」
舌を出したままの俺にそう言ってきた椎名は少し機嫌が悪かった…。
「………ごめん」
そんな椎名が少し怖くて、出していた舌を引っ込めて謝った。
それを見た椎名はため息をついて、俺の髪を乱暴に触ってきた。
「…ちょっ、椎名」
「…お前のせいじゃねぇよ」
「え?」
椎名がなんのことを言っているのかわからず、俺は首を傾げた。
「……あれは冗談だ、それに、怒ってんのは周りの奴らにで、お前にじゃねぇよ」
「…………う、うん」
俺の顔を見ただけで、俺の気持ちがわかる椎名に戸惑いながらも、椎名が俺に怒ってないとわかって、俺はほっとした。
それにしても、俺って、顔に出やすいのかな…。
いつも椎名に気持ちがばれてしまう俺は、少し心配になって、そんなことを考えていた。
そんな俺に、次行くぞ、と言って、椎名は、俺の服を引っ張り歩き出す。
よろけながらも、俺は椎名と並んで、次の動物のとこに足を進めた。
****
「くっ…かわぁいいぃぃ」
両手に収まるくらいの子犬を抱っこしている俺はとても癒されていた。
ほんと、かわいい。
この可愛いさを椎名にも知ってもらいたくて、俺は椎名のとこに子犬を連れて行こうとした。
「……あれ、椎名は?」
いると思っていたとこに椎名がいなくて、俺は辺りをキョロキョロと見渡した。
「…あ、いた」
椎名はふれあい広場から外に出て、1人ベンチに座っていた。
俺は少し椎名が気になって、子犬を置いて、椎名のとこに駆け寄った。
「椎名、どうかした?」
下を向いたまま動かない椎名に声をかけると、俺に気づいた椎名は顔を上げた。
「……もう、いいのか?」
「え、いや、まだ触りたいけど…」
「んじゃぁ、まだ触って来いよ、…俺はここから見てっから…」
そう言って、また下を向いてしまう椎名。
「……椎名は一緒に行かないのか…?」
「……あぁ、」
「………そっか」
俺はそう言って、広場に戻った。
椎名が来てくれなかったことに、酷く落ち込む俺は、さっきみたいに楽しめなかった。
やっぱ、椎名、つまんないのかな…。
子犬を触っていても、考えることは椎名のことばかりで、自然とため息が出る。
椎名が全然楽しんでいないのがわかって、なんだかすごく悲しくなった…。
ここに来たときから、あんまり動物見てなかったし、…俺だけ楽しんで、
ばかみたいじゃん…。
悲しい気持ちをぐっとこらえて、俺は子犬をギュッと抱きしめていた…。
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