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それが恋、それが愛
29

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「…なぁ、椎名、ほんとにそれでいいのか?」
「…良いって言ってんだろ」
「……けど、」

「日野、…そんなに俺に番号教えんのが嫌なのか?」

「いや、そうじゃないけど…」

「だったら黙って俺に教えろ…」
「うん…」


そう返事して、俺は椎名に自分の携帯を渡した。

椎名からのお願いは俺の携帯の番号を教えることで、そんなことでいいのかと、俺は少し拍子抜けした。


「……俺、よく仕方わかんねーから、椎名やって…」

「…日野、機械音痴だったもんな」
「……うっさい」



椎名は余計なことを言ったあと、自分の携帯を取り出して、俺の携帯を弄りだした。
俺はそれを座って眺めていた。

いいな、あんな簡単に使いこなして…。



「……よし、これで完了」
「終わった…?」


「あぁ、にしても、お前、全然携帯使ってねーな」
「……相手いないし、」
「使えないの間違いだろ…」
「…………ぅ、」


椎名にそう言われて何も言い返せなかった。
どうせ俺は機械音痴ですよ…。


「……おぃ、日野…」

「……な、なんだよ、てか椎名、顔…怖えーよ…」



俺の携帯を見ていた椎名は低い声で俺を呼び、眉間にシワを寄せて携帯を睨んでいた。



「……日野、透真ってのは誰だ?」
「透真?…友達だけど…」
「…友達だぁ…?」

「う、うん…」


椎名がさっきより険しい顔になって恐ろしかった…。


「…ただの友達がこんなに電話してくるわけねぇだろ!」

そう言って、椎名は俺の携帯を開いたまま、俺に見せてきた。
そこには着信履歴が表示されていて、透真からの着信で埋めつくされていた。



「…いや、透真はちょっと変わってて…」
「てか、これ、毎日電話かかってきてるじゃねぇか…」

「……いや、透真は少し俺に依存してて…」
「…少しじゃねぇだろ…」

「…………そうだ、ね…」


椎名に友達のことを指摘されて、その通りで俺は何も言い返せなかった…。



「……ったく、敵ばっか増やしやがって…」
「え?」


小さい声で呟いた椎名が、なんて言ったか聞き取れず、椎名に聞き返した。
けど、黙ったままで椎名は答えてくれなかった。



「……椎名?」
「…日野、もうこいつと喋んな」
「いや、それは無理…」
「…あぁ?」


ほんとに無理だから、無理だと言おうとしたのに、椎名に睨まれた。

正直、こわかった…。
てか…、


「…なんで、椎名に透真のことで、そこまで言われなきゃいけないんだよ…」

「……俺が嫌だからに決まってんだろ」

「は?」


携帯を閉じて、そう言った椎名に腹を立てた。



「お前が嫌なだけで、なんで、俺が友達と喋っちゃいけないんだよ、…お前にはかんけ…」
「関係あんだよ」
「…………」



「俺はお前が好きだっつったろ」
「……………っ」

「だから俺には関係あんだ…」

「…………」

「…ムカつくんだよ、好きなやつに…こんな変な虫がいると思うと…」



みるみる顔が赤くなる俺なんかお構い無しに恥ずかしい言葉を並べるあいつ。

俺の顔は茹でだこ状態だ…。



「……日野、俺は待つ気なんか」
「…………だ、」

「………」


「卑怯だ…」
「………」


「……俺だってよくわかんねーんだよぉぉぉぉ!!」


そう椎名に叫んで、俺は屋上から飛び出して行った。

卑怯だ…、椎名は卑怯だ。


階段を降りて行きながら、何度も心の中で思っていた。


あんな風に言われたら、俺、…椎名のこと、意識してしまうじゃんか…。


自分の気持ちがだんだん変わってきてるとわかって、俺は怖くなった…。

逃げたくなった。

もう、俺にどうしろって言うんだよ…。




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