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恋は曲者
15

及川Side


「…俺に嫉妬してどうすんだよ」


高月が出ていったあと、ドアをずっと見つめている十川に呆れ気味に言った俺は、コーヒーを一口飲んだ。


「嫉妬なんてしてないよ」

ドアから視線を外し俺を見ながら笑って言ってきた十川に俺は溜め息をつく。


「…じゃぁ、なんであんなことしたんだよ」


「んー、なんか体が勝手に動いちゃった」


笑いながら言ってきた十川にまたも溜め息をつく。

十川はこう言っているが、実際は相当イライラしているはずだ。
十川は高月のことを恋愛対象として見ている。
本人は表には出してないつもりだが、半年近く同室者をやってればなんとなくわかる。
高月に対する態度だけが明らかに違う。
それに最近はそれが目立ってきている。たぶん、転校生が来たせいだと思う。

転校生はあの生徒会に気に入られ、やりたいほうだい周りを巻き込んでいる。
俺はクラスが違うから転校生とはほとんど関わったことはない。だけど、高月と十川は毎日っていいほど関わっている。
そのせいで高月が少し変わってきた。以前までは人と関わることを避けていた高月が転校生のせいで、それを諦めかけている。

高月はすごく顔がいいわけではないが、何か、人をひきつける力を持っている。俺も高月と会ったときそう思った。
そんな高月が人との関わりを許してしまったらほとんどの人が高月を気に入ってしまうんじゃないかと思ってしまう。
これは単なる俺の予想だが、少なくとも十川はこう思ってるはずだ。
だから、こんなにも焦っている。

…まぁ、本人自身は気付いてないんだろうけど。


自分の中で考えたあと俺はまた溜め息をついた。



「及川ー、溜め息つくと幸せ逃げてくよー」

「…誰のせいだよ」

「え?俺のせい?」


笑いながら言ってきた十川に俺は少し間をあけて、気になっていたことを聞いた。



「……なぁ、高月には、言わないのか?」


少し言葉が足りなかったが、十川は俺の言いたいことがわかったらしく、笑っていた顔が一瞬にしてつらそうな顔に変わった。



「…れーちゃんには、言えないよ…」


独り言のように小さく呟いた十川に、俺は何も言えなかった。



及川Side終わり




****



「はい、多数決の結果1年A組の出し物は喫茶店ということに決りました。次回からはその準備に取り掛かりますので、皆さん協力をお願いします」

そう委員長の声が微かに聞こえ、閉じていた目をゆっくりと開けた。ちょうどそのときチャイムもなっていた。

「………ふぁ…」

体を起こし、背伸びをする。自然と欠伸も出た。


「れーちゃん、おはよ」


前の席から伊吹が振り返り笑顔でそう言ってきった。


「………」

俺は無言のまま、また机に顔を伏せた。


「もー、れーちゃんいい加減許してよ。昨日ちゃんと謝ったじゃんだから、…ね?」


…じゃないと俺寂しくて死んじゃうよ。
と最後に言ってきた十川の声がいつもより低くて俺はゆっくりと顔を上げた。


「……今日パフェ奢るから」

いつもと違う笑い方で言ってきた伊吹に、それ忘れるなよ、と言ってまた顔を伏せた。
なんか今許さないと伊吹が壊れてしまいそうな気がした俺は伊吹を許すことにした。まぁ、あんなことで怒る俺も俺だけどな…。
…一つ言っておくけどパフェにつられて許したわけじゃない。


「…それより、俺たちのクラス出し物は決まったのか?」

俺は顔を伏せたまま伊吹に聞いた。


「ちゃんと決まったよー、喫茶店にね」

「……喫茶店か」

俺は小さく呟いた。


「なぁ!十川に高月!今から食堂行こうぜ!」


横からバカでかい声が聞こえてきた。




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あきゅろす。
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