1−3
『放課後、勉強するんでしょ?亜李子』
「うん!!雪乃と一緒だよ」
『じゃあ私、図書館に居るから。終わったら呼んでね?』
「はいはい、…じゃー、また後で!!」
そう手を振って私たちは別れた
とある放課後のこと……
『……ん、ふぁぁ……』
んーっと背伸びをして読んでいた本に栞を挟んで閉じた
時計を見ればなんと6時半
いつまでたっても呼びに来ない亜李子を不思議に思い、席を立とうとした、そのとき……
『(誰か……、いる…?)』
背後に気配を感じ、勢いよく振り返った
『煤c…っキャアァ!!…、んぐ!』
「シッ、静かにアリス。君が騒ぐとシロウサギが逃げちゃう」
『ん、んん?!』
振り返った瞬間、驚きのあまり叫び声を発した私の口をいきなり塞がれた
そして大きな口に人差し指を立てて私を宥める
「アリス、アリス、僕等のアリス」
何度も「アリス」と呟くそれは、私とそんなに変わらない年頃だろうか……
三日月を逆さにしたようなにんまりした口から聞こえる声は、少し低めの青年の声だった
だが、私が《ヒト》だと認識が出来ない
塞がれた手からはとても強くケモノのニオイがしたからだ
いくらムツゴロウでもここまで手がケモノ臭いのは有り得ない
『んんー、ん、んんー!』
「なんだい?アリス、僕等のアリス」
『ん、んんー!(手を退けて!!)』
「アリス、僕等のアリス、それじゃあ分からないよ」
私は耐えられなくなり空いている両方の手で掴んでいる男の手をバッと離させた
そして大きく息を吸い込んで、一言
『さっさと手を退けないと窒息死しちゃうでしょー!!』
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