Espressivo(完結) 5 ひらひらと手を振る静也に俺も手を振り、見送る。 機嫌よさ気に帰って行く静也が多少小さくなった所でふと、静也が振り返る。 「そういえば、再来週…かな? 文化祭の前の日にMusic Studio出演決定したから」 “曲はLotusね、じゃ” ニヤリと笑い再び歩きだした静也に思考が停止する。 「Music Studioって…」 Mスタじゃんっ 反論しようとしたが既に遅く、静也の姿はもうどこにもない。 「まぢで…?」 Mスタと言えば、音楽をする者なら誰もが一度は憧れる有名音楽番組だ。 そのMスタに出演出来るのは凄く嬉しい。 PokerFaceの時も度々出演したが、それとこれとではやはり違う。 司会である森川さんは面識があるし、仕事柄人の顔を覚えるのは得意だ。 どこでばれてもおかしくない。 それに何より仁や暁、弘輝も見るだろう。 もう既に知っているだろうが、やはり気まずい。 …かと言って、きっと今更断る訳にもいかないだろうし、何より鷹牙と静也を止めるのは俺には不可能だ。 多分、もう腹を括るしかない。 静かな部屋に俺の溜め息がやけに大きく響いた。 . [*前へ][次へ#] [戻る] |