篠田学園-1部-
ゲーム
「東〜」
翌日放課後、俺は約束の時間ピッタリにロビーについた。
が、東はそれより早かったらしく、壁に背を預け携帯電話を開いていた。
声をかけると顔を上げ、仏頂面でこちらに寄ってくる。
「遅い」
「時間ピッタじゃん」
俺が怒られる要素なんてないはずだ。
やはりどこか機嫌の悪い東に、俺は一抹の不安を覚えた。
「東さ、ダンスパーティ一緒に出たい奴とかいた?」
「はぁ?なんだよいきなり」
「いーだろ、俺好奇心旺盛なの」
訝しげな表情をする東を軽く睨み、俺は正面から向き直った。
「さぁ吐け!!ゲロっちまえ」
「汚ねぇ」
「うっせぇな、ぐだぐだ言ってねぇで吐け。男だろ」
肩を両手でがっちりとホールドして、しっかりと視線を絡ませる。
ほんの数秒の沈黙の後、不意に東が顔を反らした。
髪の間から見える耳は、
「真っ赤…?」
「っ………はやくしないといい服なくなる」
「え、ちよ…」
東は視線を反らしたまま俺の腕を掴むと、ロビーの端から延びている廊下へと足を速めた。
ダンスパーティの服は学校側から貸し出しされる。
来た順に服を選んでから更衣室へ向かい、そのまま専用のホールへと入るのだ。
勿論自分で持ってきたオーダーメイドドレスを着る奴もいるらしいけど。
俺はそんなあほらしいことしたくないから、おとなしく借りる事にした。
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