篠田学園-1部-
2
あぁ、俺には本当に助けてくれる奴がいないんだ。
そう思った瞬間、視界に何かが浮かび上がった。
「さっさとここから出て行ったらどう?」
「有、紫……」
ゆっくりと唇に孤を描いたのは有紫だった。
「馨夜にはもう誰にも助けてもらえないんでしょ?」
「………」
「俺は会長に信頼されてるし、人気もある。邪魔物は出て行かなきゃ」
ニッコリと笑んだ有紫な綺麗で。
本物じゃないと分かってはいても、逃げ出したかった。
「お前は生まれてはいけない子だったんだよ」
不意に背後から声が聞こえ、振り向くと父・要の姿。
「篠宮には銀髪はいませんから」
母の冷たい笑み。
「本当、あんた邪魔」
薫の低く嫌悪の雑じった呟き。
そして、
「お前には僕だけいればいいんだよ、他はいらない。僕が愛して認めてあげる」
金髪の、綺麗な顔をした誰かの甘美な囁き。
混乱して、頭痛が酷い。
整理できない頭の中に、俺は思わず固く瞳を閉じた。
瞬間に脳裏に広がる昼間の手紙。
信じろとか疑えとか、助けてやってくれとか。
俺の方が助けて欲しい。
だんだんと薄れゆく視界に入ったのは、
笑みを浮かべた有紫とそれに寄り添う蓮だった。
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