篠田学園-1部-
2
「槇ってさ、裕樹といるとどんな感じ?」
不意に疑問に思い、気が付いたら口に出していた。
槇は一瞬驚いた様に目を見開いたが、直ぐにいつもの顔に戻り小さく笑った。
「和む、かな」
「はぁ?俺が?」
「あとは?」
文句を垂れる裕樹を無視して続きを促す。
何故か俺の本能が、ちゃんと聞けって言ってる気がした。
「他人だから考えてる事が全て分かる訳じゃない、けど何故か何処か分かる気がする。でも結局は分からない」
「邦久、それ俺の事けなしてんだろ」
「とんでもない、裕樹は可愛いよ?」
「だからそれがっ…」
「槇、他にはっ」
槇の言ってる事は分からないし、矛盾してると思う。
でも何故か、俺の蓮に対する感覚に似ている気がする。
異常な位に焦っている俺がいた。
そんな俺を見て、槇は小さく笑ってから続けた。
「その行動や言動に一喜一憂して、その人の言葉だけは、他の誰より心に突き刺さる。例えば、ちょっとした裏切りとか」
「裏切り?」
「そう、裏切り。本人にその気がない言葉でも、どんどん悪い方に考えて、傷付く」
いつの間にか裕樹は黙り込んでいた。
しかしそれすら気づかない程、俺は頭をフル回転させていた。
「篠田が会長に対して感じてるのと同じだった?」
「同、じ…?」
…だったかもしれない。
否、かもじゃない、全く同じだった。
「これ、一般的な好きな人への感情ね」
「……え?」
「ついでに、俺から裕樹への感情でもあるから」
「え゛ぇぇぇぇ!??」
だってそれは、
「なにばらしてんだよ…邦久のばか…」
そこには顔を真っ赤に染めた裕樹がいて。
「って事は…」
「恋人同士、明日で2年目」
似合わずピースサインを作った槇に、俺は盛大な叫び声をあげた。
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