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篠田学園-1部-
5


蓮から距離をとり、部屋の外へ向かう。

途中蓮に腕を捕まれたが、意地で振り払った。


「おい、馨夜!!」


怒鳴る声が聞こえて、それでも振り返る事はしないで。

蓮は俺より有紫が大切だから、

俺を必要としてくれるやつなんかいないから。




やっと自分の部屋についた時、俺の瞳は乾いていた。

「はは、泣けねぇ程ショックとか……」


笑えねぇ。

裏切られるのは慣れてる筈だ。

第一蓮のは裏切りじゃない。

当然の事だったのに、


「なんで俺、こんな凹んでんの」


想像以上にショックを受けてる俺がいた。

想像以上に蓮という男に依存している俺がいた。


腕を振り払った時の蓮の顔が、脳裏にこびりついて剥がれない。

焦ったような、驚愕したような、なんとも言い難い表情。


蓮が何を感じてあんな顔をしたのかは分からない、分かりたくもない。



俺は物心つく頃にはあんな境遇で。

お世辞にも幸せな人生なんて言えたもんじゃない。


だからある程度他人の表情には敏感だと思うし、わりとしっかりしてると思ってる。


まあ、俺が勝手にそう思ってるだけであって、実際はどうかは分からないけど。

それなりに流したり気を紛らわしたりしてきた。


でも、

蓮にやられるのはキツイ。


いろいろあったが、なんだかんだ最後は味方してくれた蓮にやられるのは耐えられない。


蓮が有紫を庇う理由は明白で、それが分かっていても尚俺はショックをうけていて。




「好き、だったのかな…」


このごちゃごちゃした感情を一言で片付けるには、この言葉しかないと思った。





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あきゅろす。
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