篠田学園-1部-
4
暫く見回してから、蓮は目を見開いた。
「これ…」
「多分、そうだと思う」
絶対違っていてほしいが、ここまではっきりと線が引かれていれば疑いようがない。
無意識に声を震わせると、俺を抱きしめる蓮の腕が強くなった気がした。
眼前には蓮の肩。
この体勢では表情は伺えない。
暫くの間沈黙が続いた。
「……かは?」
「え…?」
気まずい沈黙を破ったのは蓮。
その蓮らしからぬ声の小ささに、俺は思わず聞き返した。
「他は、他に証拠は?」
「…んだよ、それっ……」
どういう意味だよ、それ。
いまだぎゅっと抱きしめてきている腕を振りほどき、俺は蓮から距離をとった。
視界に入ったのは目を見開いた蓮の姿。
「馨、夜…?」
その声を聞いた瞬間、体の中心がスッと冷めていくのを感じた。
「そう、だよな…」
「なん…」
「会って間もない転入生なんかより、生徒会で一緒だった後輩の方が信用してるよな……」
「何言って…」
「なのに、簡単に信じたりして…」
“なんか俺、馬鹿みたいだ”
呟いて、俺は蓮から完全に離れた。
なんで信じたりしたんだろう。
蓮の立場上、有紫の方が信用してるに決まってる。
俺の言うことが信じられなくて当たり前なのに。
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