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篠田学園-1部-
3


「訳分かんねぇし…」


呟きながらもきっちり蓮の言う通りに動いてる俺は、絶対に馬鹿だと思う。

でもそれがわかっていても、目の前の優しさに縋りたいと思ってるのも事実で。


「なんか、狡い」

「ぁあ゛?」


いたたまれなくなって蓮の頬っぺたを摘んだらガン飛ばされた。


だって狡い。

今俺はソファーの上で蓮の足の間に収まっている。

しかも、向かい合う形でぎゅっと抱きしめられているというオプション付き。


この体勢でドキドキしない訳がない。

こんなに心臓が脈打ってるのは絶対に蓮の所為だ。


「今回のは聞くからな」

「助けてくれんだ?」


“今回の”って言ったのは多分蓮の優しさ。

その遠回しな、敢えて気付かせないような優しさが心地いい。


「…イアの事だろ」

「さんきゅ」


通じてないようで通じている会話に、なんだか不思議と表情が綻んだのが自分で分かる。


「これ、名前んとこ見て」

「お前の…」

「じゃなくて有紫の」


ひらひらとハンカチを見せると、蓮は若干顔を引き攣らせて受け取るのを躊躇う。

心外だ、とばかりに訂正すれば、今度は俺の口から出た名前に眉をひそめた。


「藤村の?」

「いいから、はやく」


蓮は不本意そうに手渡されたそのハンカチに視線を落とした。






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