篠田学園-1部-
2
「…どうした?」
不意に背後から声を掛けられて、俺は顔を上げる。
「会長…」
「なっ、ちょ…お前なに泣いてっ…」
「泣いて、ねぇっ…」
あれから俺は気が付いたら泉に来ていた。
どうやって来たのか記憶が全くないから多分無意識。
泉の辺に縮こまって膝に顔を埋めていたら、何故か現れた蓮に声を掛けられたって訳だ。
「目から水ぼろぼろ流してるやつのどこが泣いてないって?」
「ゴミ、だっ」
「両目同時に何のゴミが入るんだよ」
「うっせぇ…」
蓮は文句をいいながらもごしごしと、シャツの裾で流れる涙を拭く。
その手が意外と優しかったとか、俺の思い違いだと思いたい。
冷酷無慈悲な黒翼のレンが意外に優しかったなんて事実、似合わな過ぎて認めたくない。
「…取り敢えず、中入るか?」
くしゃ…と軽く頭を撫でられて、俺は無意識に小さく頷いていた。
そのまま手を引かれて教会に入ると、蓮はピアノには目もくれずに2階へと上がりだした。
そして、当然のようにソファーの端に腰を下ろし足を反対側に掛ける。
「おら、来いよ」
「な、なにして…」
蓮はひじ掛けに掛けた足を開き、俺をその間に来るように手招いた。
「馬鹿なんじゃねぇの?」
「ぐだぐだ言ってねぇでさっさと来い、意地張ってんじゃねぇよ」
ドアの前で立ちつくす俺に、蓮は不機嫌に手招いた。
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