篠田学園-1部-
名前
「ったく、この悪趣味なハンカチをどうしろと?」
血は止まってる。
傷が再び開く様子もない。
そして俺はもし傷が開いたとしても、どうしてもこのハンカチを使う気にはなれないだろう。
なぜなら、
「でっかい唇のハンカチってどうなんだよ…」
真ん中に一つ、目一杯開けたリアルな唇のハンカチってどこで売ってるのだろうか。
しかも有紫、ちゃんとフルネーム書いてるし…
まぁ、こうでもしないとなくした時返って来ないんだろうけど、そんなに大切なのか?
この唇が?
「謎だ…」
敦の趣味も謎だけど、有紫は更に謎だ。
特にほら、名前の母音が…
「………これ…って…………」
ふと、書かれた名前を見て気付いた。
「やっべ、これ……だいぶショック…かも……」
気付きたくなかった。
気付かなければよかった。
でもこれを俺に渡したって事は気付いて欲しかったのかもしれない。
「……んでだよ」
今まさに俺の予想を訂正した瞬間のコレ。
これだけハッキリ書かれてたら、思い違いだとかただのデザインだとかごまかせない。
「なにがしたいんだよ…」
“yuushI-fujimurA”
“I-A”
その文字の下にはっきりと引かれた線から、俺は思わず目を反らした。
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