篠田学園-1部-
平和?
馨夜Side
目の前には有紫。
しかもいつもとは違いその表情は曇っていて。
「どうしたの、そんな怖い顔して」
「………」
「今日の馨夜変じゃない?」
しかしいつもと同じ口調、同じ声音で喋る有紫に、俺は思わず眉間に皺を寄せた。
昼休みだというのに中庭には誰もいない。
否、いなくならざるを得なかった。
いつも笑顔を貼付けていた王子が無表情で来たのだ。
恐くない訳がない。
「…と、ところで話しってなんだよ」
「あぁ、忘れてた」
話しを反らそうと問い掛けてみると、思いの外するっと話しが変わり拍子抜けする。
急に深刻な表情になった有紫に、俺は首を傾げた。
「昨日、大丈夫だった?今無理してない?」
「え…?」
訳が分からない、と有紫の顔を見るが相変わらず真剣な表情のままだ。
「その、昨日の今日だから、ね」
綺麗な顔を歪めて俺を心配する有紫に、思わず眉間に皺を寄せた。
有紫が指示したんじゃないのか?
「別に、大丈夫だけど…」
「そう、よかった…」
“なんか教室じゃ言いにくい雰囲気だったから”
そう言った有紫は、いつもと変わらない王子な笑顔で。
イアじゃない……?
そう思える程に、有紫の笑顔は優しかった。
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