篠田学園-1部-
2
勇Side
馨夜と薫を助け出し病院に運んだ。
馨夜は俺の顔を見ると気が抜けたのか気を失い、俺は目が合った薫に思い切り睨みつけられた。
《誰だ》
《篠田勇…篠宮の本家だよ、馨夜の保護者だ》
敵意丸だしで馨夜を庇う姿は、本当に話に聞いていたあの次男なのかと疑った。
《何故要君側の君が怪我をしているんだ?》
病室で、眠る馨夜の隣のベッドで横になる薫に聞いてみた。
過去に馨夜に聞いた話によると薫は両親に可愛がられていて、馨夜の存在を煙たく思っていた筈。
《邪魔だった……兄貴にはそう言った》
沈黙を先に破ったの薫。
それでも視線は一切絡める事をしなかった。
《篠宮に帰って来て欲しくなかった……俺、見たんだ》
ゆっくりと薫が話し始めた内容に愕然とした。
《…じゃあ、君は……》
《この事は俺と篠田社長だけの秘密だから、話したら…今度こそ駄目になる》
薫は苦々しい表情で吐き捨てる様に言った。
《さっき親父に連絡した“怪我したから少し遅れる”って》
《そうか、カズは?》
《任務失敗ってだけ言って行方不明だとさ、篠田社長のこととかには触れてないらしい》
ほっと息をつくと、気付かれないように薫を盗み見た。
馨夜とは似ても似つかない艶やかな黒髪黒目、がっしりとした体。
14歳とは思えない程しっかりとした眼差し。
全てが馨夜とは正反対だった。
恵まれた存在。
そうとしか言い表し用がないほどに。
それでも内に抱える闇は大きかった。
まだ14歳という若さ故の無力感。
家庭内の問題に対する思考力。
彼もまた被害者なのだと悟った。
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