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篠田学園-1部-
8





《お前がいたら邪魔なんだよ》


俺の腰に跨がり、肩口に口許を埋めながら弱々しい一言には苦々しい何かが込められていた。


《これがとれたら携帯探してこい、多分親父の机の中にあるから》

《だってお前…》

《俺は意識不明。見つけたら助け呼んでそのまま携帯置いて来い。したらもう一回手錠つけてやる》


“オラ、外れた。行けよ、カズは今の時間寝てるから”

カチャンと外れた瞬間、薫は俺からどいて背中を押した。


俺は音を起てないようにそっと廊下を歩いて、父・要の部屋へと向かった。


部屋に入ると直ぐ机の中に携帯を見つける。

電源の落とされていたそれは、電源を入れると律儀に電池が残り少ないことを教えてくれた。


《保ってくれよ…》


小さく呟きながらもメール作成画面を開く。

今じゃ電話をしている時間すら惜しい。

迷わず玲也のアドレスを開き、本文に“help”とだけ書いて送った。

送信終了画面になった瞬間に落ちた電源に、俺はホッと胸を撫で下ろした。





《薫…》

《終わったか》


部屋に戻ると俺が出て行った時と同じ格好で薫が倒れていた。

腹に巻いたシーツは血が滲んでいる。


《お前怪我…》

《手寄越せ、元に戻す》


俺の声など聞こえていないかのように告げる薫に、俺は眉を歪めた。

服の上からぐるぐる巻きにしたシーツには、夥しい量の血が滲んでいる。


苦しくないはずがない。

それでも悟られまいと必死に繕う薫に、俺は素直に従うことにした。








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