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篠田学園-1部-
7




「ったく、余計なことしやがって」


そう言ったカズはゆっくりと近づいて来ると、外れかけていた手錠を元に戻した。


「お前が唆したか?あ?」

「ちがっ…」

「どうだかな、イギリスじゃ散々可愛がられてたんだろ?」


カズは心底楽しそうにくつくつと低く笑うと、そのまま何もせずに部屋から出て行った。


俺の上には血だらけで倒れる薫。

その顔は苦しそうに歪められ、脂汗をかいている。

呼吸はあり出血量もさほど多くはないが意識がない。


このままだと危険だと感じた俺は、せめてもの応急処置に…と傷口に破いたシーツを巻き付けた。

幸い俺の手錠は手が大きく広げられるように鎖が長く作られているので巻く事はできたが、やはり甘い。

あまり意味を成さないであろうそれに、俺は焦るばかりだった。







《ん…》

《か、薫…大丈夫か?》


それから暫くして薫がゆっくりと上体を起こした。


辛そうに眉を歪めているが命に別状はなさそうでホッとする。


《っ……カズか………》

《薫っ、なにしてんだよ!?》

苦々しく呟いた後、薫はゆっくりと俺にのしかかり、落ちていた歪んだピンのようなもので手錠を外し始めた。


《ちょっ…》

《カズ来たらどうすんの、静かに、俺はまだ意識不明って事にしとけ》

《でも…》

《うっせぇ、黙れや》


先程よりも更に荒々しくなった口調に、俺はただ純粋に驚いた。

それと同時に疑問も浮かんだ。


《なぁ、なんで助けるんだよ》


小さく聞いた一言に、薫は小さく肩を揺らした。







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あきゅろす。
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