篠田学園-1部-
交渉
馨夜Side
“舞蝶はチーム内ではキョウと呼ばれていた。”
蓮から無理矢理渡された書類の出だしに書かれていた台詞に、俺の心臓は有り得ないくらいに脈を打っていた。
「カズとGeekとGenocide…ね」
玲也は隣で小さく呟きながら眉間に皺を寄せる。
書類をじっくりと見詰める玲也に習い、俺も書類に目を向けた。
「え…?」
カズか再び動き出したという事実に頭が真っ白になる。
何故今なのかとか、何の為にこんなことをするのかとか、そんなことはもうどうでもよくて。
ただひたすらに“嫌だ”という感情しか湧いて来なかった。
「…レン、望みは何だ」
暫くすると今まで黙々と書類に目を通していた玲也が、唸るような、苦しむような低い声をだした。
「話しが早いな、流石青龍」
ニヤリ、と嫌な笑みを浮かべた蓮を玲也は睨み据える。
俺はただ、大人しく二人の会話を聞いているだけ。
「手助けしてやる代わりに、舞蝶…否、キョウに会わせろ」
「嫌だ」
俺が嫌な顔をする前に、玲也が拒否の意を示した。
あまりに早い反応に俺は目を見開いて玲也を見る。
視線の先の玲也は眉間に皺を深く刻み、不機嫌でそれでいて真剣な表情をしていた。
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