[携帯モード] [URL送信]

篠田学園-1部-
お宅訪問




「…すごかったな」


帰りのバスの隣に座る慶輔が言いづらそうに呟くのを聞いて、俺は溜め息混じりに苦笑した。

俺がバスに乗り込む直前までしつこく“直ぐに、だぞ”と言い続けた蓮の所為でくたくただ。


「悪ィ、後で電話する」

「あ、あぁ…」


旅行中に慶輔が俺に気づき、取り付けた約束は確か“帰ったら部屋に行く”だった。

今回の件で不可能になってしまったそれに、俺は仕方なしに電話を使うことにしたのだ。


「電話くれたら、きょ…お前の部屋に行く」


若干不機嫌そうに聞こえる程ぶっきらぼうな声音は、慶輔が少なからずショックを受けていた証。

慶輔は本当に不機嫌な時は素直に言う。

少なくとも俺には。

変な話しだが本当にそうなんだ。


まぁ、その話しは置いといて。


「じゃあ、紅茶入れてやるよ」

ニヤリと笑んでやると複雑そうに表情を歪める慶輔。

口を開いては閉じてを繰り返し、結局は先程の俺の言葉に同意するに留まった。


「この旅行中に何があったの?
なんか櫻木が恋する乙女みたいなんだけど…」


不意に頭上から聞き覚えのある声が降ってきて、俺は顔を上げた。








[次へ#]

1/86ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!