篠田学園-1部-
2
「皆息子の為なら金に上限がないからね」
「真のお坊ちゃまって訳か……」
俺が呆れた様に呟くと、勇さんは上機嫌に言った。
「だからこそ、篠田グループはお金持ちなのだよ」
勇はニヤリと人の悪い笑みを浮かべた。
この男はどんな風にすれば他人に自分がよく見られるのか分かっているから性質が悪い。
天然にタラシな奴よりは格段に付き合いやすいからいいのだけど。
「ほら、馨夜。見とれてないで座りな」
勇はソファーの前に立ち、俺に座るよう促す。
「相変わらず自意識過剰」
俺がボソッと呟くと勇さんは軽く笑った。
取り敢えず足も疲れたしソファーに座る事にして、俺は勇さんの向かい側の席に腰を降ろした。
「…にしても、よく化けたな」
「だろ?どっからどうみても優等生!!」
軽く顔の近くにピースサインを持っていきながら唇に弧を描いた。
今の姿じゃ絶対に馨を連想できやしない。
そこさえ絶対にしておけば後はもうどうにでもなる。
「あぁ、安心したよ」
心底安心した様子の勇に俺は満足してニッコリと笑った。
「ああ、学校の説明をするか」
「げ、それパンフで見たからいらねぇ」
あんなのを口で説明なんかされたら堪ったもんじゃない。
先日手渡されて読んだパンフレットはテキスト位の厚さがあったのだ。
口頭で詳細説明なんかされたら確実に日が暮れる。
「そうか?じゃあ、パンフレットにも載ってない最低必要事項を少し説明しようか」
勇はサディスティックな顔でニヤリと笑った。
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