篠田学園-1部-
理事長室
コンコン
「失礼します」
小さくノックして声を掛けると、理事長室の重厚な扉はすんなりと開いた。
「遅かったな、馨夜」
「この学校がデカすぎるのが悪いと思うんだけど」
不機嫌に迎え入れる勇さんに、俺も不機嫌に呟く。
「そうか?うちの家の方が大きいだろう?」
不思議そうに言う勇さんに俺は溜め息をついた。
確かにここより勇の所有する家の方が大きい。馬鹿みたいに大きい。
しかしあれは篠田グループの所有物で、事務所も兼ねているからまだ納得する大きさだ。
私立といえどたかが学校でここまで大きくする必要性が俺には分からない。
「何のためにこんなデカすぎる学校建てたんだよ」
半ば呆れながら呟く俺に、勇さんは爽やかに言い放った。
「バカな金持ち共から金を巻き上げるため」
「勇さんだって金持ちなくせに」
勇がこういう人だと分かってはいても言ってしまうのは、俺があまのじゃくな所為なだけではないだろう。
人間の心理だ、多分。
「俺は世界のために金を使ういい金持ちだからいいんだよ」
尚も爽やかに言ってのける勇に、俺は溜め息をついた。
もう掛けることばも見つからない。
いつまでもこんなところで立ち話をしていても進まないので、入口に立ちふさがる勇を押しのけ理事長室に入る。
「…ホント、どんだけ金巻き上げたんだよ」
そこはもう、どこから突っ込んだらいいのか分からない様な豪華な部屋だった。
こんなところじゃ逆に仕事に集中できないだろう。
俺だったら絶対に逃げ出してしまう。
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