篠田学園-1部-
3
「総長…レンもいるのか?」
「言っただろう?勢揃いしてるって」
さらりと言った勇に、俺は心底脱力した。
「あと眼鏡も入っているだろう?」
「俺をオタクにしたい訳?」
勇の台詞にがさごそと紙袋を漁りながら怨みがましく睨み上げると、小さく笑われた。
「安心しなさい、銀縁だから」
「もさもさ黒髪に黒縁とか本気で笑えないから」
若干の安堵感に溜め息をつくと、勇は更に笑った。
「眼鏡にカラーコンタクトはきついと思うから、青瞳はそのままでハーフって事にしておきなさい」
勇はそれだけ告げると爽やかに俺の部屋を出て行った。
「ハーフ、ね…」
一人残された俺は部屋の隅にある鏡を通して自らの姿を見た。
日本人とは思えない、艶やかな銀色をした頭髪。
何を写しているのか分からないほど深い青い瞳。
誰が見ても日本人だとは思わないこの容姿。
“篠田”と名乗りながらもハーフと公言することの重みは、勇だって分かっている筈だ。
それでも敢えて瞳だけを隠させなかったのは、何か考えがあってのことなのだろうか。
「わかんねぇ…」
今わからなくてもいいことなのか、それすらもわからない。
でも、何かが変わる事だけは分かった。
勇のことだ、今よりは事態が好転するように計らってくれたのだろう。
これからの事に、少しは期待してもいいのだろうか。
そんな淡い期待を胸に、俺は荷物をまとめを始めた。
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