篠田学園-1部- 始まりの日 「馨夜、俺の学校来るか?」 そう言われたのは高校に入学してまだ2ヶ月も経たない時期だった。 「何でいきなり?」 俺、篠田馨夜は読んでいた本にしおりを挟み、机に置くと声のした方を振り向いた。 そこにはいつになっても若々しい俺自慢の義父・篠田勇の姿。 彼は昔から頭が良く、現在は篠田グループの若き社長だ。 そんな勇が提案してきた“転校”の話し。 こんな時期になんて普通じゃ考えられないが、俺の場合は少し事情が違う。 「まぁ、いいけど?」 何か考えがあってのことだろう、と承諾の意を伝えると勇はあからさまに安堵の表情を浮かべた。 勇が理事長を勤める学校は超金持ち高校で、そこらのホテルなんかよりよっぽど待遇がいいと評判だ。 どうせ行くなら豪華な方がいい。 今の高校は滅多に行っていない所為か、あまりいい学校とは思えていなかったところだ。 しかし俺はそこであることを思い出す。 「勇さんの学校、確か…男子校じゃ…」 「大丈夫だろ?」 考える様に俯いていた顔を上げると、目の前にはいつもの鬼畜顔で笑む勇の姿があった。 「なんか企んでる?」 嫌な予感が頭を過ぎり、思わず聞いていた。 「さぁ、どうだろうね」 勇は表情を変えず、年に似合わず妖艶に笑んだ。 . [次へ#] [戻る] |