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王都学園



即座に落ちる雷。
途端に暗くなる部屋。停電したらしい。五分もしたら自動電源が入るだろう。
雷はゴロゴロ鳴りっぱなしだ。どうやら近くにいる。

光っては一瞬だけ部屋が明るくなるを繰り返す。




ふと紅林の方を向くと、震えてる……のか…?
大丈夫だろうか?


俺は紅林とは馬が合わないだけで人柄はけして嫌いではないし、この学校で唯一俺と張り合える相手とさえ思う。
生徒会と風紀、学校内で権力を二分するこの学校で。




「おい、平気か?」

「……………ああ、もんだいな……………ひっ」

紅林が喋ろうとした途端にひときわ強く雷が鳴った。
紅林が発した小さな悲鳴。

少し涙目なのかバツが悪そうに下を向いて俺から顔を逸らした。





――うわ、これは、まさか、


「紅林、お前……………雷ダメなのか……?」

「っ…………ああ。少し、トラウマがあってな……」



こんなに弱々しい紅林なんて初めて見た。
なんというか………………反則だ。



俺は暗闇の中、席を立って手探りで紅林の方へ行った。











「おっおい!青柳!なっなんの真似だ!?」


上擦った声を出す紅林。
それもそうだ。
俺が、紅林を、抱きしめたからだ。


うっすらと冷や汗をかいて震える体。服越しでもわかるが、程よく筋肉がついているのがわかる。




「つい、なんかお前が可愛く見えちまってな。でも、こうすると雷の音気にならないだろう?」

「……はぁ、誰にも知られたことはなかったのに、よりによって青柳に知られるとは」



紅林の腕が俺の腰に回った。


「お前、けっこう腰細いな」

「はぁ?そうか?そういう紅林だってガチムチ系かと思ってたら意外とソフトでびっくりしたけどな」

「なんだよそれ」



お互いに笑い合った。
こんなに打ち解けて話したのは初めてだ。
あんなに仲が悪かったはずなんだが。
今抱きしめ合って感じるのは、最初からこうあるべきだったんじゃないかというくらいだ。




気がついたら部屋の明かりが戻っていた。
相変わらず雷は止まない。





こんなにも近くで紅林の顔を見たのは初めてかもしれない。


――ヤバい。ヤバい。制御が効かないなんて………この俺が、




紅林に、俺はキスをした。

抵抗はされなかった。



俺は夢中になって口づけた。
絡まる舌に唾液が顎を伝う。





「はぁ……は、はっ…」

「…ふ、はぁ、ん…はぁ」




お互い息が上がってしまった。






「………顔色、良くなったじゃねぇか、ふぅ…」

「…はぁ、おかげさまで、な、」







その日から、俺たちはキスする仲になった。

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