SS
盲点
気づかなかったって気づきたくなかった。こんなにも近くにいたのに。
俺はいったい何を見てきたのだろうか?
盲目的に要に恋をしていたって思いこんでただけだなんて。
あいつが俺や、生徒会の奴ら、その他要が惹きつけてた奴らを見る目は、ただただ怯えた顔や苦笑いばっかりだった。
なのに、なのに、なんだよ。
お前、本当はそんな顔で笑ってんの?
要に「親友だ」なんだのと引きずり回されて、生徒会や俺らみたいなのに疎まれて。クラスメートたちは離れていったんだとおもっていた。
……違うんだな。
お前が、お前に巻き込まれないように遠ざけてたんだな。
要が会長とくっついて、お前にあんまり絡まなくなった今、幸せそうにクラスメートと話す。
歯がゆい。
俺の目は、本当に節穴だった。
でも、まだ諦めるには早いだろう?
「雪路、ちょっといいか?」
戸惑いながらもクラスメートの輪から抜け出し、俺の下に来る。
「な、何?要なら生徒会室だよ?」
「いや、お前に用があるんだよ」
「お、俺ぇ?」
「いいからちょっとこい」
ふわぁ、なんて変な声をあげた雪路の腕を掴んで引っ張る。
コンパスの違いから早足についてくる。
何故か必死な雪路が面白い。
ククっと思わず笑うと不思議そうに俺の顔を覗き込んでくる。
「岸部?」
「ん?悪い悪い。なんか必死についてくるお前が可愛くて」
「かっ……可愛い?俺が?」
少し顔を赤らめる。
なんだよ。そんな反応すんなよ。
目的の屋上につくと、雪路がポツポツと話しだす。
「俺、てっきり岸部には嫌われたのかと思ってた」
「あ?」
「岸部って、要のこと好き……だったみたいだし。生徒会の奴らみたいに」
「………ああ。好きだったって思ってた」
「思ってた?」
「ただの盲目な勘違いだったんだよ」
「……?…どういう意味?」
「本当に好きな奴は違ったってこと」
頭に?を浮かべる雪路の顔を両手で包む。
顔を真っ赤にする雪路。
「好きだ。雪路陸」
少しの沈黙の後、俯いたまま雪路が喋りだす。
「岸部って、要がくる前からさ、人気者だったよな。爽やかで頼りになるって。本当はクラスが一緒で、人気者な岸部と沢山話してみたかった。だけど、いつも人だかりがある岸部には、俺、チキンだから近づけなかった。その、だから、要が来て、岸部が要と仲良くなって、俺、少しでも岸部に近づけて、嫌われてたって…………嬉しかったんだ。………………………………だから、その………………………俺、俺もっ、岸部、岸部伊月が好きっなんだ!!!!!」
雪路がたどたどしく話し終わった瞬間、その小さい体を抱きしめた。
こんな、小さい体で、色んな嫌がらせに耐えて。
それでも要には文句一つ言わないで。
「好きだ。今まで、嫌な思いさせて、本当に悪かった。今度は、今度は、雪路は俺が守から」
雪路の唇に、噛みつくようにキスをした。
‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐
●岸部伊月 キシベイツキ
爽やか優等生君。王道君の要に惚れていた。
●雪路陸 ユキジリク
王道君の要に親友扱いされてた可哀想な平凡君。
王道君が生徒会長とくっついた後の話。
【王道展開後】爽やか優等生×脇役平凡
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