SS フワリと君 今年は残暑が厳しくて、十月頭までは暑いってニュースとかで言ってたのに…………! 「はっくし……寒い!なして!?木村の嘘つき!」 「木村って誰?」 「こんにちはサンデーのお天気おじさん」 「流石に寒いんじゃない?その格好は」 「うぅ………せめてYシャツが長袖だったら!!!」 九月も後半の今日。今朝はちょっと肌寒いくらいにしか思ってなかったんだ。日も上がればまた暑くなると思ってこの格好。 半袖のYシャツに夏服のズボン。ちなみにYシャツの中は何もきてない。素肌にYシャツだ。 ふと周りを見回すとブレザー、セーター、ベスト、パーカー、ジャージ…………みんな用意良すぎだろ! 「誰かジャージとかあまってねぇかな?」 「じゃあ、俺のカーディガン着る?」 「いいのか!?」 「村瀬には大きいかもだけど、このままだと確実に風邪引くよ。……………いくら村瀬が馬鹿でも」 最後の一言は聞こえないことにする。そしてありがたく高嶋のカーディガンを借りた。 フワリといい匂いがする。 香水とか石けんとか人工的なものじゃない匂い。 「高嶋の匂い?」 「…………へ?」 「なんか、このセーターいい匂いがする」 俺は高嶋のYシャツの裾を掴んで腕に鼻を押し付け、犬のようにスンスンと匂いを確かめる。 「おんなじ匂い!」 「………村瀬、それって無自覚にやってるよね………はぁ……」 高嶋の体臭はいい匂いだと誉めてるのにため息をつきやがった! 優しくて顔もよくて背も高くていい匂いもするなんて…………… 「いっこくらいわけろし」 「意味わかんないから」 「つまりだな、って、ふ、ふ、ぶはっくし」 カーディガン借りたのにも関わらずくしゃみがでてしまった。 ううむ。まだちと寒い。 チラリと隣を伺うと長袖のYシャツだけで少し寒そうな高嶋が。 そんな姿を見て、俺はいいことを思いついた! うん。超名案。 「高嶋!」 「なに?」 「ここ座って」 俺は高嶋を席につかせると、すかさずその膝の上に座った。 つまり、椅子、高嶋、俺の三段重ね(?)の完成だ。 「………村瀬、確かに暖かいけどさあ……はぁ、無自覚って小悪魔だよね…………」 「これでお前も俺も暖かいから一件落着だろう」 クラスメートの視線が集中してたとか俺は気づかなかった。 始業チャイムが鳴るまでそのままで暖まった。 高嶋(馬鹿なとこも可愛いんだけどねぇ………ここまでされちゃうと理性が…!特に余った袖とかヤバいんだけど…………!!) 村瀬(いい匂いだし暖かいし気持ちいいし幸せ〜) 世話焼きイケメン×お馬鹿チビ [次へ#] [戻る] |