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焦れっと一年間
6月梅雨寒
制服も冬服から夏服へチェンジした6月。
俺のポリシーは必ずベストを着ること。
理由はベスト着た方がかっこいいから。

ただ、梅雨だしベスト着るとなんかもふもふする。




「げ、お前なんでベストなんて着てんだよ!」

松野があからさまに嫌な顔をしてくる。
ムカつく。海斗がいると大人しくなっちゃう癖に。

「暑苦しい!」

「そういうお前はもう半袖とか早すぎだろ。風邪引くぞ」

「ひかないひかない。だって俺、小学校から今まで皆勤だもん」

「………どんだけだよ」


突然後ろから現れた海斗に飛び上がる松野。
ウケる。


「はよー」

「おう。あ、ヒロのベスト姿可愛いな」

「バカにすんなボケぇ!」

「よしよし」

「撫でるなぁ!っあ、ああ!縮む!押さないで!」



三人で連むようになってから早いことでもう2ヶ月になる。
いまだに海斗に少しビビってる松野は面白くってたまらない。



「お、おはようございます三島様」

「とりあえず一発?」

「いやっ!おはよう三島ぁ!!!!」

「はよ。松野はいい加減俺に慣れろ」

「努力します…………」



相変わらず女子は遠巻きに海斗を見てるけど、男子は案外普通に海斗と喋る。
ま、ウチのクラス限定だけれども。
海斗も海斗でウチのクラス以外ではムスっとしてるしな。



「あ、そうだ。お前ら今日の放課後ヒマか?」


松野の首を腕でホールドしたままなのに普通に聞いてくる海斗。


「ヒマだよ。そしてそこのビビりも部活ないからヒマだよ」


ビビりってなんだ!
って松野がギャーギャー言ったけど、すかさず海斗が絞めるからすぐ黙った。



「いいとこ連れてってやるよ」

「マジぃ!?やった!」

「なんか嫌な予感がするのは俺だけ?」



そう、この時ばかりは松野のビビりセンサーに従っていればよかったんだ。










――放課後


「…………海斗、だ、だれ?」

「あ?知らなかったか?」


俺たちは今、学校の裏門にいる。
そしてその前には二台のバイクと一人のおっかない高校生?
同じ制服着てるから高校生だと思う……………うん。
スキンヘッドに顔中ピアスだらけ。めちゃめちゃ目つき悪ッ。


「ばっ馬鹿笠木!一組の原田さんだよっ!」

「タメ?」

「そうだよ!馬鹿!」

「馬鹿馬鹿言うなっ!馬鹿!じゃあなんで“さん”づけなんだよ」

「そっそれはだな………」


俺たちがスキンヘッド……もとい原田さんのことで騒いでいると、急に体が宙に浮いた。


「うわぁ!」

ストンと下ろされた先は赤いバイクの上だった。
俺を持ち上げたのはやっぱり海斗だった。


「ヒロは軽すぎじゃねぇ?」

「海斗がマッチョなんだろ!このぉ!」

「よしよし」

「バカにすんなぁ!」


最近このパターンばっかし…………。


ふと松野の方を向くと黒いバイクの上で固まっている松野がいた。


「は、原田さん、えと、その」

「さん、はいらない。原田でいい。あー松野?」

「は、はい。松野です」

「ははっ」


あんなにおっかない顔してんのに笑うとたれ目になるんだ。
鋭い雰囲気が笑っただけで一気に和らぐなんて。不良って顔が良くなきゃなれないのかな。



「いてっ!なんだよ海斗〜」

「別に」

そんなムスっとした顔で言われてもなあ。







なんだかんだで出発した着いた先は………………


「倉庫?」

「ああ。俺らのたまり場的な?」



初めて乗ったバイクのせいでふらつく俺を難なく支えて歩く海斗。


ガチャンと倉庫の扉を開く。





「ちわーす」
「おつかれさまっす」
「ちわっ」
「おっす」
「三島さん、原田さんおつかれさまっす」
「いつみてもかっけー」
「あのチビ誰だ?」
「原田さんにひっついてる命知らずがいるぜ」
「今日のカモ?」


海斗と原田に向けられる挨拶と、時々混じる俺たちへの何か。



「お前らー、このちびっ子は俺んだからよろしくな」

「ついでにこのビビりもちびっ子の連れらしいから」


声高らかに言い放った海斗と原田。
よくわかんないけどとりあえず安全らしい。











「たまり場とかやっぱり海斗は不良なんだな」

「怖くなった?」

「いや?つーか元々怖いし」

「ふはっ」


あ、まただ。
この笑い方、好きだなー。
本当に可愛いく笑うよな。不良のクセに。


「よしよし」

「海斗俺の頭、つか髪の毛好きだな」

「あー?ヒロの髪の毛気持ちいいからな。つか、ヒロ自身も好きだぜ?」

「ははっなにそれ?俺も海斗好きだよ」



キョトンとする海斗。
あれ?なんかおかしかったか?



「………ま、今はそれでいいわ」











そんな俺らを生暖かい目で見守る松野と原田とたくさんの不良たちがいたなんて勿論俺は気づいてない。

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