焦れっと一年間
5月薫風緑樹
先週、不良に絡まれる。一発お見舞いして速攻逃げた。
今日、再び大ピンチ。
先週の数倍のカラフル。目がチカチカ。
護身棒とか一応持って歩くようにしてたけど、意味無さそうだ。
携帯はさっきから通話中にしてある。
気づいてくれただろうか?
というか………………チンピラって卑怯すぎるだろ。かつあげに失敗してさらに反撃されてキレて集団リンチかよ!
「なぁ、僕、聞いてんの?」
「はぁ。聞いてますけど」
つか“僕”ってなんだし。俺は立派な高校生だ。こうみえて身長はまだ伸びてるんだ。
「ずいぶんと余裕だな」
「いや、めちゃくちゃ怖いッスよ。ほら、足震えてきたし」
「ならさぁ、早いとこお財布だしなよ。痛い目みたくないだろ?この前のはなかったことにしてやるからさあ」
「たいしてもってないッス」
「いいよ。身分証でも」
あー怖い。
逃げ道は塞がれてるし。この前以上に痛い思いしたくないな。
でも無抵抗ってのは男としてのプライドが許さない。
てか遅い。
まだ着かないのか?あいつ。
「チッ。ボケッとしてんなよっ!しけた面してイラつくなぁ」
あ、殴られた。俺の体は殴られた勢いで壁に叩き付けられた。
「っつぅ……………」
「早く出して。次はアバラいくぜ?」
カラフルがニヤついている。
……………くっそう。
「あんたらにやる金なんかねぇよ!!」
俺の渾身の一撃はあっさりとかわされた。
「…………ふぅん。そんなことしちゃうんだ。おいっ!!!!お前ら!やるぞ!」
「最初から大人しく言うこと聞いてりゃよかったのによぉ」
「馬鹿なやつぅ!!!」
口々に言いたい放題な不良たち。
ギャハハハと下品な笑い声が響く。
「じゃあ俺から〜」
汚い金髪が拳を振り上げた。
俺はせめてもの抵抗に頭の上に腕でバッテンをつくった。
ヒュッ
バシィッ
「あれ?」
「悪ぃ、遅くなった」
衝撃は来ず、変わりに金髪の拳を受け止めた海斗がいた。
「三島…………海斗………なんでこんな所にいんだよ…………」
驚きすぎて目をまん丸にした不良たち。そりゃあそうだよな。天下の三島様がこんな下級チンピラの前なんかに姿を表すなんて前代未聞だよな。
「居ちゃ悪ぃか?俺の大事な連れがピンチだっつぅから来たまでだ」
「大事な連れ?」
「ああ。そこのちんちくりんのことだ」
カラフル下級チンピラと麗しき赤髪。カオスとか思ってたら、話しの矛先が俺に。
「って………ちんちくりんじゃねぇし!!!………いってぇ…」
場違いにもちんちくりんとは失礼すぎると思いっきり叫んだらさっきぶつけた場所が痛んだ。
帰ったら背中に湿布だな。
「おい」
「なっなんだよ」
「今後こいつに手ぇだしたらお前ら、潰すから。わかったら散れ」
低い声でカラフルを威嚇する海斗は、やっぱり噂に聞くほどの不良なんだと再認識する。
ものすごいスピードで散っていくカラフルたち。
「大丈夫か?ヒロ」
心配そうに俺の顔色を覗き込む海斗。
八の字眉毛をしててもかっこいいとは何事だ。
「平気。来てくれてサンキュー!」
俺が大丈夫なのがわかってホッとしたのかいつもの爽やかな笑みの海斗。そのまま俺の頭を撫でる。
「一応心配だからおんぶしてやるよ」
「やだよ!恥ずかしい!!っう」
「ほらほら。よしよし」
軽くいなされ軽々と抱き上げられてしまった。
同級生なのに子供抱っこ……………。落ち込むわぁ……。
きっと抗議しても無駄だろうなぁ。
「珍しく大人しいな」
「暴れると痛いからな」
「よしよし」
「海斗って俺の頭撫でるの好きだな」
「サラサラしてて気持ちがいい」
「あと海斗の赤髪って綺麗だよな」
「………はぁ?」
「さっきのカラフルたちはきったない色だったから」
「………持ち前の品位の違いじゃね?」
「品位とか自分で言ってる………!」
俺が恥ずかしがるの見越して裏道から送ってくれる海斗はやっぱりかっこいい奴だ。
ちょっぴり絆が深まった?五月。
爽やかな風が気持ちよかった。
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