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逃げるルートを頭で計算する。
陽はほっといても大丈夫だろう。
私は机に足を掛けようとしたが、何かに阻まれた。
途端に今日何度目かの黄色い声が上がる。
まったく、声変わりとかしてないのかと疑うほどの高さだ。
「浅香君、机に足を掛けるのは、主席の君がするような行為ではないだろう?」
振り向くと、さっき私が観察していた美人だった。
「あー」
スミマセンと続くはずだった言葉は言えなかった。
私は強い力に体を反転させられた。
「会、長?」
「そうだ。お前、庶民にしては良い挨拶だったぜ」
「はぁ」
物凄い上からの物言いに呆れる。
黄色い声は、いつの間にか収まっていた。
両肩を強い力で掴まれていて、痛い。
「おい、似非金髪。紀一を離せ。おまえごときが触んな」
陽が私を会長から引き剥がし、後ろに隠すように前にでた。
そして、例の美人に向かって言った。
「鷲宮副会長、会長をきちんとさせてくださいって俺、いつも言ってますよね?」
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